経営×経理

財務データの見える化で
銀行融資も「即OK」、新規出店を打診されるまでに

 「ひどい帳票」が生まれてしまう原因が業務のクラウド化によって「見える化」し、資金繰りをタイムリーに把握できるようになったことで経営管理が可能になった。当然、「健全な経営をする会社」として銀行が企業に向ける視線も変わってくる。

河江 昨年の12月に新規出店されたとのことですが、金融機関との関係性という面では、クラウド会計導入による効果はありましたか?

高島 同社はもともとキャッシュフローが悪く、利益は出ているのに手元のキャッシュが薄くて、銀行借入になかなかOKが出ない状況でした。なぜキャッシュフローが悪いのか判然としなかったのですが、私たちがクラウド会計を使って管理体制を整え日次の入出金データを可視化したことで、その理由が明らかになってきたのです。分析の結果、改善には運転資金の増額が必要だという結論になり、新たに事業計画書をつくって銀行へ持参したらすぐさま融資にご理解をいただき、2016年12月に新規店舗をオープンしました。具体的に金融機関の担当者から評価してもらったのは4点ほどありました。

 ・クラウド会計を使ってタイムリーに試算表を提出できる
 ・経営者が資金繰りをタイムリーに把握し、管理できる体制になった
 ・会計事務所への「丸投げ」ではなく、企業が自計化の方向に向かったことで、経営者に計数感覚がついた
 ・事業計画が明確な数字の根拠に支えられるようになった

 出店のための融資を受けたのではなく、運転資金を増加させるための融資を先に得てから、テナント出店の話を持ち込まれました。これまで事務作業がものすごく煩雑でしたから、オーナーは新規出店には及び腰でしたが、業務をクラウド化することで、オーナーに時間のゆとりができました。逆説的ですが、余裕ができたことで事業意欲が湧き、新しい店を出そうと決心されたのです。銀行から持ち掛けられた話なので、あとはオーナーの決断次第でしたが、「GO」を出す気持ちの余裕ができたのは大きいですね。

河江 会社の売上や損益もよくなったと思いますが、オーナーが時間的な余裕が持てるようになったのですね。オーナー経営者はワーク偏重になることが多く、ワークライフバランスを意識されない方も少なくありませんが、オーナー夫婦の仲はどうですか?

OKK FOODS社長の片玉枝さんとパート従業員さんたち

高島 ……そういえば、最初に訪問したときはお互い忙し過ぎて会話をする暇もないようでしたけど、睡眠時間もしっかり確保できたことで、いまは冗談を言い合ったりして、楽しそうに働いておられますね。

 業務のクラウド化は導入ステップを工夫すれば、組織に負担を掛けずに業務効率を向上できる。見える化した会計は、融資や新規投資という好循環を生むだけでなく、「数字に強い経営者」に変わる機会にもなる。バックオフィスの経理を攻めの現場に変える一歩として、「クラウド会計」を活用してみてはいかがだろうか。

 *株式会社OKK FOODSが経理クラウド化の際に導入したソフトウェア、周辺機器は以下です。

 ・会計管理:MFクラウド会計
 ・POSレジアプリ:Airレジ(焼肉店)、スマレジ(小売店)
 ・請求管理:MFクラウド請求書
 ・勤怠システム:ジョブカン
 ・給与計算:MFクラウド給与
 ・現金:MFクラウド会計の現金出納帳機能
 ・領収書読み取り用小型スキャナー:ScanSnap(スキャンスナップ)
 ・情報共有:チャットワークDropbox

※本記事は、株式会社OKK FOODSの許可を得て掲載しています。

 

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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