他人のせいにしている限り、問題は何も解決しない

 自分に投げかけるべき「5つの質問」の一番目は、「自分が得たい結果は何だろう」……問題を「自分事」としてとらえる質問でした。

 これは、「自分は一体どうなりたいのだろう?」というのと、ほぼ同じ意味です。まずは、このように自分に問いかけるのが、いい自問自答を引き出すためのパターンです。

 ただ、この場合「上司やお客さんなど、会社のイヤな人間から逃れること」というのは、心の奥にある「本当の願望」ではありません。

 なぜなら「いい人間関係で仕事をしている状況」を理想に置いているからこそ、今の人間関係に対する不満が起こっているからです。

 このように、心の奥底にある願望を隠している“表面的な願望”を、私は「ニセの願望」と呼んでいます。

 この「ニセの願望」を「自分が求めている本当の願望」だとカンチガイしていると、いつまでも自分が望んでいる状況はつくれません。

 この事例の場合でいうと、現在の「上司やお客さんという不快な人間関係を避けたい」がニセの願望で、本当の願望は「快適な人間関係の中で楽しく仕事をしたい」です(ニセの願望については、次回に詳しく説明します)。

 この場合の「いい自問自答」の例では、最後の質問(5)の答えで「一緒に仕事をしたいと思う人と話してみよう。いいアイデアが出てくるかもしれない」と、自分の本当の願望を探り出し、いい仕事環境をつくることに向けて動き出すことに成功しているわけです。

 一方で「悪い自問自答」のほうは、上司、取引先、会社と、すべて「今の状況は他人が悪い」という結論におさめてしまっています。

 これは、自問自答の非常に悪いパターンです。

 こうして「他人のせい」にしている限り、問題は一向に解決しません。

 やはり、何としても最初の質問で、「これは自分の問題だ」ということを明らかにしないといけないのです。

 優秀な人、あるいは社会的に成功している人でも、問題を他人のせいにしてしまったばかりに、つまずいてしまうという方は案外多くいます。