これまでに「引きこもり」経験者を28人雇用した企業がある。
2月3日に放送されたNHK番組『クローズアップ現代』の中でも取り上げられていた「(株)アイエスエフネット」(東京都港区赤坂)というIT系企業だ。
先日、神戸市で行われた講演会で、この企業の話を最後に少しだけ紹介したところ、講演の後、皆から「最後の話をもっと詳しく聞きたかった」といわれた。そんなこともあったので、今回は改めて、同社の取り組みを紹介したい。
まずは昼1時間出勤の“ランチトレーニング”から
雇用までの3つのステップ
先日の番組では、会社名も出ていなかったのに、同社には放送後、100件を超える問い合わせがあったという。ほとんどは「引きこもり」の家族や当事者からのものだ。
同社はなぜ、これだけの数の「引きこもり」経験者を採用しているのか。
青山の街並みを見渡せるリフレッシュ室。カウンター席に囲まれた、長いテーブル席には、10人余りの男女が弁当を広げている。話を聞くと、その中には、引きこもり経験者もいれば、うつの疾患者もいる。
彼らは同社に採用されたものの、長期間社会から離れていたため、昼に1時間だけ出勤してもらって、皆でランチを食べる「ランチトレーニング」を行っているのだ。
番組でも話したように、「通勤するのが苦手」とか「昼食で気を使い過ぎて疲れてしまう」人が多く、就労以前に長続きしない原因の1つになっている。
そこで、同社は「FDA」という引きこもりなどを支援するNPO団体を同社内に設置。働く前に、トレーニングや会議などを行い、彼らを指導している。
そもそもNPOが企業内につくられること自体、珍しい。すぐ近くに雇用という道筋が見えていることや、身近に職場環境に慣れることができるという意味でも、注目される。
ランチトレーニングは、正午から午後1時まで、社員も一緒になって昼食をとる。皆、スーツを着こなし、毎日、青山という都心に通勤。オフィスのエレベーターにも乗る。
働く前に、そんないくつもの緊張する壁をクリアできる工夫が施されているのだ。