みずほフィナンシャルグループ(FG)は来年5月までに最大で6000億円の普通株を発行し、併せて、優先出資証券も約2000億円発行する方針を発表した。
同社は2003年、巨額の不良債権を処理するため、取引先などに対して普通株に転換できる優先株を発行し、「1兆円増資」を行なった。その後、優先株の転換による希薄化を避けるため、昨秋までは自社株買いを進めていた。
今後、仮に普通株を6000億円増資すれば、現在の株価水準で計算すると、発行済み株式数は約2割増え、1株当たり利益が希薄化する。株価上昇につながる成長戦略を示せなければ、既存株主から批判が高まる恐れもある。
にもかかわらず、増資に踏み切った背景には、自己資本の健全性をめぐる規制強化の動きがある。米金融機関へのストレステスト(健全性審査)において、米当局は金融機関に対し、「コアTier1」を重視する姿勢を示した。
コアTier1の定義は統一されていないが、一つの考え方は中核的自己資本(Tier1)から優先株・優先出資証券・繰延税金資産純額(繰税)を除き、資本性の高い普通株などを中心としたものとされる。
三井住友フィナンシャルグループは2.71%、三菱UFJフィナンシャル・グループは4.53%であるのに対し、みずほFGは開示していない。その訳は数字の低さにある。
みずほFGは普通株への強制転換型優先株や繰税なども含めた独自指標の「本源的資本」比率を公表。前期末時点で3.12%であり、6000億円の増資を行なえば、さらに1%増えるという。
だが、本源的資本のなかには「1兆円増資」の優先株(普通株への強制転換型)も含まれており、そのぶんだけで本源的資本の半分近くを占めている。さらに繰税も除けば、コアTier1は1%以下とも推察される。
こうしたなか、金融庁がコアTier1の増強につながる公的資金注入を模索しているとの観測も上がっている。みずほFGはあくまで自力調達を行なう構えだが、今後、厳しい舵取りを迫られる可能性がある。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)