「プリウスのディーラー在庫が足りない」
2011年4月7日、ダラスオートショーの場で、米国トヨタ営業本部の米国人関係者が筆者に漏らした。
「いや、これはけっしてアースクエイク(地震)の影響ではない。ガソリン価格が上がっているからだ。ただし、アースクエイクによる様々な影響で、プリウスを含めて、トヨタ各車(の製造と入荷)が今後どうなるか、我々には全く予想がつかない。言えることは、アメリカではいま、ユーザーは燃費の良いクルマを買いたがっているということだ」と、続けた。
その言葉を受けて筆者は、アメリカのガソリン需給の実情を肌で感じたくなった。そこで、ヒューストンに向かった。現在、アメリカの原油供給の内訳は、国外(カナダ、中東、中米、南米)から約60%輸入、残りの約40%は自国産で産油地はテキサス州、アラスカ州、カリフォルニア州だ。なかでもメキシコ湾岸の海底からの採掘量が多く、テキサス州ヒューストンを中心に石油関連施設が多い。
ダラスからヒューストンへは、フリーウエイ45号線を平均速度70マイル(約112km/h)で南下し、約4時間の道のりだ。ヒューストンの市街地周辺に「石油の街」の面影は感じられない。だがフリーウエイ45号線をさらに30分程南下、NASA・ジョンソンスペースセンターへの誘導路、NASA パークウエイ出口を過ぎ、さらに15分程南下。すると、フリーウエイの左手に、1200エーカー(485万㎡/14.6万坪)の巨大石油精製施設が見えてくる。
ここが、大手石油企業BP社内で最大規模の製油精製所がある街、テキサスシティだ。現在、29基の精製装置と4基の化学処理施設があり、毎日46万バレル(ガソリン1100万ガロン分=全米需要の3%)の精製を担っている。テキサスシティの人口4万人のうち、約4000人が同社の従業員だ。住宅用地から精製施設までは約2kmある。筆者は精製施設の近くで写真撮影をしたが、鼻をつく独特の臭いがして、その場に長くいる気がしなかった。
テキサスシティへの原油供給は海底のパイプラインが主体だ。海底の石油掘削について調べるため、湾を挟んで向かいにあるガルベストン市に向かった。同市は細い半島形状をしており、その南側はビーチリゾートで、北側は小さな漁村、カリブ海リゾート観光船発着所、そして石油掘削用施設の改修ドックが並存している。