大統領令から4日後に発せられた
米国学会164団体によるメッセージ

 今年1月27日、トランプ大統領は、イスラム圏7ヵ国からの入国を禁止する大統領令に署名した。わずか4日後の1月31日、米国の科学界164団体は、トランプ大統領に公開書簡を送った。この公開書簡は、大統領令に対する「外交・人道・安全保障への甚大な影響、そして我が国の科学と技術に対する悪影響」への懸念で始まる。

 ついで科学と技術、外国人学生・研究者・技術者・科学者の修学と就労、そして米国に及び得る悪影響を簡潔に示している。結びでは、米国の繁栄と国境の”強化”に寄与する移民政策・ビザ政策に協力する用意が科学界にあることを、米国は移民国家であるという事実と共に示し、問題の大統領令の廃止を求めている。公開書簡の発行元164団体のリストは、アルファベット順で先頭のAAASから末尾のイエール大学まで、PDFで足掛け5ページに及んでいる。

 移民政策を含め、トランプ政権下で起こりそうな問題の数々については、大統領選終了直後から、世界の科学界に懸念され、議論され、発信が続けられていた。このことが、大統領令から4日間での公開書簡の取りまとめと公開につながったのだろう。

 日本の近代科学は、明治維新前後に欧米から輸入されたことになっている。しかし実際には、世界規模の情報流通がなかった時代も鎖国していた時代も、日本なりの科学の進歩があった。また、それらは、日本でだけ評価されるようなレベルにはとどまっていなかった。

 一例を挙げると、江戸時代の和算は、世界の数学からほとんど切り離されていながら全く遅れを取っておらず、ほぼ同時期に同様の重要な発見が行われていた。また日本は、多数のノーベル賞受賞者をはじめ、優れた科学者を多数輩出してきた国でもある。科学・技術そのものに関しては、今のところまだ、世界から取り残されているわけではない。

 しかし、社会や政治に対する的確な働きかけやインパクトある発信、結果として何らかの影響を及ぼして物事を動かすことに関しては、正直なところ「日本の科学界は全然かなわない」と思う。「欧米では」という決まり文句は「出羽守」(でわのかみ)として嫌われるが、日本ではまだまだ繰り返す必要がありそうだ。