良い会社とは
「優秀な人が多くて忙しい会社」

 学生は、最初に就職すべき企業をどのように選んだらいいか。

 雑誌などでも時々特集を組むが、「10年後、20年後に、成長している企業」を選ぼうといった企業の評価基準は、ほとんど役に立たない。

 端的に言って、将来のことなど分からないからだ。学生が企業の成長性を評価するのは無理だ。しかし、安心してほしい。ビジネスパーソンやアナリストなどの専門家にも成長企業の見極めはやはり無理なので、自分以外の誰かが、密かに確かな成長企業を見極めているといったことはない。

 学生は、その企業で働いた時に、自分にどのような人材価値が身に付くかを中心に考えて就職先を選ぶといい。

「この人が私の師匠だ」といえる指導者が仕事を教えてくれるような職場が理想的ではあるが、なかなかそのような場を得ることは難しい。

 次善の一般的な評価尺度として、「優秀な人が多くて、忙しい職場が、良い職場だ」と申し上げておこう。付け加えるなら、その会社から転職する人の価値が高い会社が「いい会社」だ。

 周囲が優秀だと、結果的に自分も努力することが多い。また、仕事のスキルを磨くには、実際に仕事の必要性に直面することが一番だ。「量を伴わない質の向上はない」と思っていてよい。

 近年は、忙しくて時間的な余裕のない職場を「ブラックだ」として嫌う風潮もあるが、これはあまり適切ではない。忙しくても、スキルが身に付いて、将来昇進・昇給の可能性が十分あり、あるいは、別の良い職場への転職者が多い職場は、「いい職場」だと言える。心や体を壊してはまずいが、ワーク・ライフ・バランスを考えるのは、相当に年寄りになってからでいい。官庁、金融、商社、マスコミ、コンサルティング会社など、人気の職場はいずれも忙しいし、仕事を通じて自分のスキルに有効に投資できた人が成功している。

 ただし、会社が、何十年にもわたって隆盛を続けて、同時に自分がその会社で長く必要とされ続けるかどうかは定かでない。将来、クビにはならないとしても、その職場・会社が魅力的であり続けるかどうかは、全く不確実だ。一方、ある職場で数年先に、自分がどのような人材価値を持つようになるかについては、ある程度予見可能だ。従って、会社の将来性よりも、自分の人材価値に注目することが合理的なのだ。