ストレス解消を自分の外に求めても、一時の慰めにしかならない。ストレスは、ストーリーの中で生きていることを知らせてくれる贈り物。「ワーク」の問いかけによって、自分の考えが真実ではないと気づけば、苦しみはなくなる。
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5 苦しみの背後にある考えをつきとめる

 真実ではない考えに対する執着以外によって引き起こされたストレスというものを、私が体験したことは一度もありません。

 すべての不快な感情の背後には、真実ではない考えが隠れています。「風が吹いて欲しくない」、「夫は私に賛成すべきだ」といったように、私たちは現実に抵抗する考えをもつことでストレスを感じ、その状態のまま行動するので、ストレスはさらに増えます。それでも本来の原因となった考えを理解しようとはせず、自分以外のことでストレスを解消しようと試みます。他人を変えようとしたり、セックスや食べもの、酒、薬物、お金といったものを求めるのです。

 ところが、こういう方法はつかの間の慰めであり、自分のことはコントロールできるという幻想を与えるものにすぎません。

 どんなストレスであっても、それは「あなたは夢の中にいますよ」と教えてくれる、思いやりのある目覚まし時計だと覚えておくと助けになります。つまり、落ち込みや痛み、恐れといったものは、「自分が今、何を考えているか、見てみなさい。あなたは真実ではないストーリーの中で生きているんですよ」と言ってくれている贈り物なのです。夢の中にとらわれていると、自分の外にあるものを求めることで、ストレスに対処しようとします。

 私たちは通常、自分の考えよりも感情にまず気づきます。だからこそ、ストレスになっている感情は、ワークの対象となる考えがあることを教えてくれる目覚まし時計なのです。真実ではない考えを探求することで、常に本来の自分に戻ることができます。本来の自分ではないものを信じ、幸福につながらないストーリーを生きることは、あなたの心を傷つけるのです。