最近、ビジネススクールの教室で議論していると、30歳代半ば学生から「大卒の若い人は自分から仕事しない」「段取りしてあげないと仕事ができない」という声を、よく耳にする。
それが時代によるものか、世代によるものかは明確ではないけれども、いまの若い人の主体性や自律性が低いとすれば、いままでのような人材育成のやり方は、機能しなくなるだろう。特に終身雇用制度を採っている組織では、人の入れ替わりは非常に少ないので、動機づけの高い人が多くないと、組織はうまく機能しなくなる。
言い方を変えると、いまの30歳代以上の人たちが経験してきた、従来のOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)が成立していないということになる。30歳代前半から半ばの人たちが、若手として育てられた頃は「好きなようにやれ、それでいい仕事ができればいい」というようなやり方が主流だった。
だから、育てられる方も、初めから枠にはめられ、段取りが決められているよりも、目標だけは与えられるものの、手順や段取りは自分で工夫して、仕事をこなす方がいいという考えの中で育ってきた。そういう彼、彼女たちから見ると、「いまの若い人はそうでもない」と言う。
だが、果たして「いまの若い人は……」という評価は、本当なのだろうか。私はモチベーションが低い、あるいは動機づけが弱いというように、ひとくくりで評価することは、間違っていると思っている。
動機づけのための別の
仕掛けが必要
では、いまの若い人は主体性や自律性が低下し、レ-ルが敷かれていないと動かないように見えるのはなぜだろうか。現在の20歳代前半の若い人たちは、日本が高度成長期を経て経済的には成熟した後に生まれ育っている。少子化で兄弟も少ない。家計の所得は高くなり、子どもの数が減っているので、子ども1人にかけるおカネは増えている。