モバイル決済やロボットによる資産運用など、金融とITを融合した新たなサービス「フィンテック」が台頭中だ。既存の金融機関はこの状況にどう対応するのか。4月に銀行の業界団体である全国銀行協会の会長に就任した小山田隆氏に聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
──会長就任の抱負の一つに「利便性が高く、安心・安全な金融インフラの整備・構築」を挙げていますが、既存の金融機関は安心・安全の期待には応えてきた半面、利便性ではフィンテック事業者に劣ると感じます。どのように顧客利便性を追求していく考えですか。
今や異業種のIT企業である米国のグーグルやアマゾン、中国のアリババ集団といった企業が、自社の持つ商流情報とリンクさせた資金の決済・調達サービスを提供しています。また、(無料対話アプリ)LINEも「LINE Pay」というスマートフォン向けの決済サービスを提供しています。
一度そうしたサービスを経験すると、その水準がユーザーエクスペリエンス(顧客体験)として当たり前になりますし、さらに利便性が高いサービスへのニーズも高まってきている。そこへの対応が今後の重要ポイントです。
実際に(自身が頭取を務める)三菱東京UFJ銀行では、インターネットバンクのじぶん銀行を設立し、決済などの手続きがスマホの操作だけで完結できるサービスを提供しています。また、「MUFGコイン」という独自の仮想通貨の実証実験も始めており、決済処理の効率化や将来的なコスト削減につなげることも考えています。
他の銀行も独自でフィンテックに取り組んでおり、こうした動きは非常に大きなうねりになってくる。全国銀行協会としては、業界全体が活用できるオープンなプラットホームの構築が期待されています。各銀行のニーズや現状認識を踏まえて、相乗効果が発揮できる「場」を提供する考えです。
──近いうちに銀行の利用者は何か変化を感じることができますか。