スペインのプラド美術館(マドリード)は有名作品を所蔵しつつ、それを「適度な広さ」で鑑賞できるのでありがたかったです。メトロポリタン美術館(米国)やルーブル美術館(フランス)は広すぎてつかれてしまいますからね。あとオーストリアのウィーンにある美術史美術館はとてもよかったです。ハプスブルグ家の美術品を大理石の贅を尽くした空間の中で、しっかりと見られます。恐らく私達が現地でこうした西洋画を鑑賞するのと、太田記念美術館(原宿)の畳の広間で、外国人が浮世絵を観るのは同じような感覚なのでしょう。

――美術を楽しむ上でおさえておきたい映画や小説はあるでしょうか。

 映画『エゴン・シーレ 死と乙女』は面白かったですね。19世紀後半に生まれたスキャンダラスなオーストリアの画家の生涯を描いていて、当時ウィーン世紀末美術の中心的存在だったグスタフ・クリムトも登場します。 他に『みんなのアムステルダム国立美術館へ』という映画もありました。4月公開の『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』もありますが、美術館のドキュメンタリー映画がここ数年、流行っています。

 小説では、司馬遼太郎の短編小説『蘆雪を殺す』は若冲の時代に生きた画家のことを描いていて面白く感じました。

日本の展覧会の主催はマスコミ中心
海外では主催者が多様化

――日本の展覧会運営や美術界をもっと魅力的な存在にする上で何か意見はありますか。

 日本は展覧会の主催が新聞社やテレビ局などマスコミ中心です。それはそれで、機能してきたところもありますが、例えばスペインのフェルメール展に行った際は、銀行が主催者となっていました。その銀行の店頭に行くと、展覧会のポスターが貼ってあるわけです。海外では証券会社なんかも主催者の一つとなっていますね。そういう風に層が多様化していった方がよいのだろうと思っています。

 展覧会の収支を考えると、東京でやる大規模なものは基本的に黒字ですが、地方美術館は赤字が多いですね。個人的な考えとして、よく考えたら例えば美術館の入館料が1500円というのは安い金額です。世界中からテーマに沿った美術品が一同に集まって、人件費や保険料、輸送費など多額のお金をかけた作品を見られるわけです。「世界では入館料が要らない美術館が多い」といった声を聞くこともありますが、ルーブル美術館なども入場料は高いです。日本の展覧会の入場料が特段高い、というわけではないと思いますよ。