東京電力と東北電力管内での節電目標は、紆余曲折の末、結局7~9月の企業と家庭におけるピーク時の消費電力を前年比15%削減することに落ち着いた。計画停電が原則不実施とされ、胸を撫で下ろした人も多いだろう。
しかし、自主努力の節電は不確定要素が多く、昨夏のような酷暑になれば「停電もあり得るのでは」という心配は残る。また、今後のさらなる大地震の可能性も盛んに報道されている。とらえどころのない電力への不安が解消されない今、絶対的に頼りになる「自家発電機」の人気が衰えないことは、当然の帰結だ。
家庭や企業向けのポータブル自家発電機は、本田技研工業(ホンダ)とヤマハ発動機が2強。ヤマハでは対前年伸び率が、3月単月で200%、3~4月で170%となり、現在は在庫が一掃されて、全モデルがバックオーダー(入荷待ち)という状況だ。「増産対応を進めているが、震災の影響で一部の部品に調達の問題があり、納期は不透明」(ヤマハ)という。ホンダでも、「東北や関東地域の個人や企業からの注文が非常に多く、需要に供給が追いつかない状況がいまだに続いている」と話す。
ホンダでは、特に人気なのがコンビニやスーパーで買える家庭用カセットボンベを燃料に電気を作る「エネポ」(定格出力900VA)や、エネポと同じ定格出力でガソリンを燃料とする「EU9i」というモデルだ。いずれも「インバーター」という家庭用電源と同じ良質な電気を作る装置を搭載するため、パソコンなどの精密電気機器に使うことができる。小型軽量のため移動に便利、素人でも操作できる簡便さ、比較的静かというのも特長だ。
ただし、900VAのモデルは、白熱灯(最大消費電力の目安:100W)、ノートパソコン(同50W)、携帯電話の充電(同15W)など、消費電力量(W)が少ない機器向きだ。それらに加えて、たとえば冷蔵庫(同1600W)、カラーテレビ(同100W)、コーヒーメーカー(同450W)などの生活家電を同時に使う場合は、定格出力2600VAの「EU26i」など、より高出力の発電機が必要となる。
価格はエネポが約10万円で、EU9iが約13万円、EU26iは約31万円(全てメーカー希望小売価格、ネットショップやホームセンターでは割引きして販売)。「出力が大きくなれば、高額になり、可搬性も低下する。停電時に最低限必要な電気製品が何と何で、それらの合計最大消費電力が何Wかという基準で選ぶと良い」(ホンダ)。
ところで、ホンダの最上位モデルは5500VAも出力する「EU55is」だが、この約55万円もする発電機を購入する個人も、「少なからずいる」というから驚きだ。理由を聞くと、「オール電化住宅に住む家庭のバックアップ用電源として支持されている」という納得の答え。停電で露呈したオール電化住宅の欠点を、高額のポータブル発電機が埋めているというわけだ。
なお、試しにヤマハの発電機を扱う、在京のカインズホーム町田多摩境店やケーヨーデイツー小金井店に確認したところ、やはり在庫はゼロ。一方、ホンダの発電機を扱う島忠ホームズ小平店では、エネポを1台、EU9iを7台、EU16i(1600VA)を5台販売していた(5月28日現在)。だが、島忠の担当者も「新たな発注はできない状況。メーカー担当者も秋くらいまで品薄状態が続くと言っていた」と話す。
ホンダによると、最近では企業からの注文や問い合わせも多くなっているという。わずかに出回る商品を個人と企業で取り合う構図は、もうしばらく続きそうだ。
(大来 俊/5時から作家塾(R))