●透明性の高い人事制度をつくる
 私は、透明性と納得性が担保されているのであれば、「たとえ社員間の年収格差があっても人は辞めない」と考えています。

 社員の努力や貢献に対して、会社が公平に評価し、報酬として還元しなければ、社員のモチベーションは維持できません。

・透明性
「何をやったら本給が上がるのか」「何をやったら手当がつくのか」「何をやったら昇格するのか」、その基準を明確にしておくこと。

・納得性
 社員が会社(上司)の評価を受け入れることができるように、徹底的に話し合うこと。
 私が社長就任当時、日本レーザーの人事制度は、親会社にならって年功序列的な差がつきにくいものでした。

 たとえば、ボーナスは、「半期で本給の2ヵ月」を基準とし、評価が低い社員には「1.9ヵ月」、優秀な社員には「2.1ヵ月」支給します。つまり、やってもやらなくても、「0.2ヵ月」分の差しかつかなかったわけです。

「定時に出社して、定時で帰宅する社員」と、「朝300キロ走って長野でデモを行い、その後300キロ走って会社に戻ってきて、それからドイツにFAXを送ったり電話をかけたりして夜10時まで働く社員」のボーナスの差が「0.1ヵ月」しかなかったのです。

 やってもやらなくても評価に差がつかないのなら、社員のモチベーションは上がりません。働くすべての人に公平にチャレンジする機会を与え、結果に対しては誰もが納得できるよう、公正に評価することが大切です。

 公正な評価をするためには、社長ひとりが鉛筆をなめるのではなく、役員全員が全社員の評価をしたあとに社長とともに長時間論議し、役員間の基準や価値観の調整を毎回行うことが重要です。

 私も役員とともに、はじめは1泊2日で人事評価をしていました。
 学歴、性別、国籍、障害の有無にこだわらずに人を雇用するためには、時代や環境変化に合わせて制度をつくり変えていく必要があるのです。