「春眠暁を覚えず」は国家への反骨の詩だった?

「早春の朝寝は気持ちいい」という意味ではない

「春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えず」に始まる『春暁(しゅんぎょう)』は、中国唐代の詩人 孟浩然(*1)(689~740)の代表作(*2)です。

 こので冒頭の句で彼は「寒くてつらい冬も過ぎ、いよいよ春になったぞという喜びを、夜が明けたのも気付かないぬくぬくとした眠りであらわしている」……訳ではありません。教科書にも、辞書にもそう書いてあるかもしれません。でも、違います。

 この句をまず、理系的に(?)分析すれば、「春は冬より夜が短くて、睡眠時間が足りないなあ」となります。

 日本でも室町から江戸時代までそうであったように、中国も定時法ではなく不定時法でした。日の出から日没までが昼の時間(*3)、日没から日の出までが夜の時間です。夜の灯りは松明かロウソクしかなく、当然、夜は寝るのが中心となります。

*1 もうこうねん/こうぜん。唐の時代の代表的詩人として王維と並び称された。
*2 「春眠暁を覚えず  処処啼鳥を聞く 夜来風雨の声 花落つること知る多少」が全文。
*3 正確には江戸時代の明け六つは日の出の35分前、暮れ六つは日の入りの35分後だった。