民意は「大連立」か
震災以来、一時休戦状態となっていた政治が大きく動いた。菅直人首相への不信任案は大差で否決されたが、この過程を通じて、菅首相が、時期を曖昧にしながらも辞任を表明したことで、事実上の関心は、次の政権枠組みとポスト菅の人選に移った。
日本の制度で、首相を辞めさせることは簡単ではないが、いったん辞任を口にした以上、菅首相は外交内政共に首相としての機能を発揮することが難しい。また、形の上では不信任案が否決されたとしても、国会議員の半数以上が菅氏の辞任に賛成で、且つ国民の内閣不支持率が支持率を大きく上回る現状で、菅氏が粘り続けることは難しい。
また、震災と原発への菅内閣の対応には大いに問題があり、彼には早く退いて貰うことが国民多数の利益に叶う。菅氏は、また首相辞任論が遠のくような事態の発生を願っているかも知れないが、これ以上彼に時間を与えては拙い。
但し、ここまでの倒閣運動は、事実上菅氏の資質を最大の問題としたにも関わらず「次の首相候補」が提示されなかったし、たとえ建前に過ぎないとしても「内閣が替わると、こうする」という政策論を欠いた、政治行為として極めて不完全なものだった。このため、「菅辞任」を前提とするにしても、その先が見えない状況になっている。
与党である民主党が分裂を内包し、参院では与党が多数を持てずにいる現状で、国民の望む次の政権の選択肢は、震災復興を目的とする「大連立」のようだ。不信任案否決後の『読売新聞』の世論調査(6月4日発表)では、今後の望ましい政権枠組みについて、民主中心が10%、自民中心が11%、大連立が30%、政界再編による新しい枠組みが40%といった支持率になっており、「政界再編」の目的を「民主党と自民党をリシャッフルすること」と考えると、当面の選択肢として、民意は大連立的な枠組みを指向しているように見える。
大連立には、チェックの不在と責任の曖昧さの二点の大きな欠点があり、筆者は一般論として大連立という枠組みを支持しないが、これだけ政治状況がこじれると、現実的な問題として、震災からの復興をスピーディーに行うために、復興を目的とする大連立政権が時限的にあってもいいとも思える。