アメリカは、中古品などのセカンドハンド(第二次)市場が非常に発達した国である。古いモノや自分にとっては不要になったモノを、市場に再還元する仕組みが整っており、そうしたモノを売買する人びともたくさんいる。消費者が流通市場をあたかも“手作り”してしまうかのような機運が全米各地に根をおろしているのだ。
その中でも歴史あるセカンドハンド市場は、NPO(非営利組織)から生まれている。その代表例が、グッドウィル・インダストリーズ(以下、グッドウィル。日本の人材派遣業のグッドウィル・グループとは無関係)である。
グッドウィルが創設されたのは1902年。メソジスト系の牧師が福祉組織として設立した。恵まれた家庭が放出する家財道具や衣服などの不用品・不要品を集め、その修理に貧しい地域の人びとを雇用した。そして修理の終わった品を再販し、そこで得た儲けをふたたび福祉活動に循環させた。不用品・不要品を元手に、雇用を生む仕組みを作り出したわけである。
その仕組みは今でも変わらない。グッドウィルが毎年生み出す収入は約37億ドル(2009年度)に達する。2400の店舗で寄付をした人の数は6700万人にも上り(アメリカとカナダ)、今や社会システムの重要な構成要素になっていると考えて良いだろう。アメリカなら、どの都市をドライブしていても、あちこちでグッドウィルのショップに出くわす。
グッドウィルは、貧しい人びと、職のない人びとに対して職業訓練も行う。2009年には2万人がトレーニングを受けたという。職業訓練は、コンピュータプログラムや医療関連、製造業など幅広い分野におよび、GE(ゼネラル・エレクトリック)やGM(ゼネラル・モーターズ)といった大企業への就職を果たした人びともいる。
アメリカでのグッドウィルの存在感は、不景気で家に不要なモノが増えているという認識が広がるなかで、最近さらに高まっているようだ。要らないモノを処分したいが、捨てるのは忍びない。そんな罪悪感のようなものを、グッドウィルは拭い去ってくれるのだ。
週末ともなれば、何箱もの段ボール箱に要らなくなったモノを詰めて近くのグッドウィル店を訪れる人は多い。持ち込むモノは、服、台所用品、中古のコンピュータや電子機器、電気用品、スポーツ用品などさまざまだ。
ただ、グッドウィルに持ち込む品物は基本的に「寄付」なので、どんなにたくさん持って行っても換金してくれるわけではない。モノを無駄にしなかったということと、その売り上げが社会に還元されるということが、人びとのモチベーションになっているわけだ。