熊本地震から1年。被災地では急ピッチで復興が進むが、その影では健康被害の芽がまき散らされている。損壊した家屋を解体する際に、使われていたアスベストが飛散している可能性が高いのだ。復興の最前線を回った。(取材・文/ジャーナリスト 井部正之)
急ピッチで進む
熊本の住宅再建
死者225人、重軽傷者2709人を出した熊本地震から1年あまりが経過した。
一時は約18万人が身を寄せた避難所はすべて閉鎖されたが、現在でも住宅の再建ができず、仮設住宅や民間住宅を借り上げた「みなし仮設」で約4万7000人が生活している。
熊本・大分両県で被害総額は約2.4~4.6兆円。うち建築物などの被害がもっとも大きく約1.6~3.1兆円に達する。実際、被災建築物は全半壊4万2701棟、一部破損など15万6296棟と合わせ約20万棟に上り、もっとも被害の大きかった益城町では、98%以上の建物が損壊したほどだ。
「がんばっぺ熊本」をスローガンに復旧・復興に向けた取り組みが続くが、今もその爪痕は大きく残っている。
行政は住宅の修繕・建て替えを生活再建の第一歩となるため、公費をつぎ込み、急ピッチで解体を進めており、3月末までに約6割を完了させた。
ところが、である。急ピッチで進めてきた解体作業であるがゆえに、看過できない健康被害の芽がまき散らされている。それがアスベスト(石綿)だ。