意外に知られていない
「男性不妊50%」の現実

「ああ、やだやだ。やっぱり不妊治療なんかやめて、自然に授かるまで待とう」

 そう思った読者も少なくないのでは。だが、ちょっと待ってほしい。出産をめぐる実情はそれほど単純でもないのだ。

 森永卓郎氏は著書『<非婚>のすすめ』(講談社現代新書)の中で、1941年に岩倉具栄公爵が出版したという『戦時人口政策』という本を取り上げている。以下はそのくだりだ。

「大正7年8年の我が国の人口増加が、最高度に達していた頃は一夫婦は平均5児を生んでいたし、医学的にも日本人は普通年齢に結婚して完全なる結婚生活を営めば、まず平均4児を生み得ることになっている」

 だが2010年、ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数「合計特殊出生率」は1.39。前年より0.02ポイント上昇したものの、依然低いことにかわりはない。子どもを産むことは、一生のうちあるかないかの「一大事」になってしまったのだ。冒頭にも触れたように結婚したからと言って、また、望んだからと言って、必ずしも産めるとは限らないのである。

「産みづらい時代」になってしまったのはなぜなのか。あらためて不妊症の原因や背景について松本さんに聞いてみた。

「不妊症の一般的な定義は健康な男女のカップルが、避妊なしのセックスをして2年以上経っても授からないこと。

 女性側に原因があるものと思い込んでいる人は多いですが、じつはそうでもないんです。WHOが不妊の原因を調べたところ、夫のみに原因があるケース、夫婦両方に原因があったケースは合わせて49%でした。不妊カップルの2組に1組は男性側に原因があった、ということですね」

 そういえば、ジャガー横田さんや太田光代さん、東尾理子さんなど、女性有名人の不妊治療はマスコミを賑わせても、「オレも取り組んでいます」という男性有名人の話はあまり聞かない。

 だが現実には、「男性不妊症」は年々増えている、と言われている。

 1992年、デンマークの研究者が「過去50年間に男性の精子が半減した」と発表。これを受け、日本でも調査を行ったところ、過去30年間に10%の精子減少が認められたという。とくに1990年以降、強い減少傾向があったそうだ。

 原因として指摘されているのが、ダイオキシン、PCB、DDTといった環境エストロゲンの影響である。実際、環境汚染の著しい中国では不妊カップルが急増。専門家の調べで、男性の精子の数が30~40年前の20~40%と激減していることがわかった。中国新聞社(2009年3月2日付)によると精子バンクの供給量は圧倒的な不足状態で、提供を待つ夫婦は1000組以上にのぼる、とされる。「闇の精子バンク」も横行しているという深刻な事態だ。