記憶偏重で偏差値至上主義――。そんな日本の教育に限界が訪れている。
急速にグローバル化が進み、工業化社会から情報化社会へと移行した今、リスクや変化を恐れずに世界で戦えるビジネスパーソンが渇望されているが、そうした人材は現在の日本には十分ではなく、海外から調達する日本企業も少なくない。国際的な競争力をつけられる教育ができていない日本で、今後、世界で活躍できる人材を育てるにはどのような教育改革が求められるのだろうか。当連載では、スタンフォード・ビジネススクールでMBAを取得し、日本とアメリカの教育の両面を知るネットイヤーグループCEOの石黒不二代氏をナビゲーターに、新しい時代におけるニッポンの教育像を探っていく。
初回である今回は、小学校時代をイギリスで過ごし、社会人になった後もハーバード・ビジネススクールで学んだ経験を持つライフネット生命の岩瀬副社長と共に、「海外から見た日本の教育システムの問題点」について考える。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子、撮影/宇佐見利明)
「正解」があるのは日本だけ?
多様な価値観を持つ欧米教育とのギャップ
――海外で教育を受けた経験のあるお二人。日本の教育とはどのような違いがあるのでしょうか。
岩瀬 私は小学校時代をイギリスで過ごしましたが、今でも印象に残っていることがいくつもあります。例えば、サッカーの授業です。実力によってチーム分けをし、強い選抜チームは他校などと試合をしていた一方で、それ以外の児童は手を使ってもいいなどという特別なルールの下でゲームをしたり、様々な賞を作って楽しんでいたんです。
「サッカーが上手かどうか」という軸だけで評価してしまうと、得意ではない子どもはゲームを楽しめなくなるかもしれません。ですが、この授業ではユーモアのある人、クリエイティブな人、みんなを盛り上げている人を評価して、サッカーをみんなが楽しめるゲームにしていました。それは、子どもながらにいいなと思いましたね。そして、物事にはいろんな評価軸があっていい、というのを叩き込まれたような気がします。
歴史の授業は、日本のように「年号」を覚えるのではなく、「物語」を身体で覚えるものでした。チャールズ2世が絞首刑にされるところなど有名な場面の絵を描いたり、時には清教徒革命について学ぶために、羽根付きの帽子をかぶったりコスプレをしてお城に出かけました。城の前に立っていると「ここでどんな風に戦ったのかな」などと想像力が湧いてきたのを覚えています。