中国の太陽電池メーカーにも採用され、フッ素化学事業が活気づく
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 世界的な太陽電池市場の躍進に伴って、ダイキン工業は一見関係のなさそうなフッ素化学事業の拡大を目論んでいる。

 空調事業で世界首位級を誇るダイキン。エアコンの冷媒にも使われるフッ素化学事業は第2の柱となっている。そして同社のフッ素樹脂コーティング剤「ゼッフル」が、ここにきて太陽電池のパネルを保護するための材料として浸透し始めているのだ。

 太陽電池は屋外で使うため、発電を担うセルなどを劣化させる水分や紫外線は大敵だ。そのためパネルの裏側に保護シートを付けるのだが、海外メーカーでは主流の「PVFフィルム積層」から、より低コストのフッ素樹脂コーティングへの置き換えが始まっている。フッ素の使用量が3分の1程度に下がり、1ギガワット当たり10億円ほどのコストカットにつながるという。

 これまでゼッフルは高層ビルや橋など建築用塗料が中心だったが、太陽電池市場の盛り上がりを受け、2009年頃に量産化に成功。ダイキンは中国の生産拠点を増強して、売り込みを強化し、現在数億円の売り上げを15年度には10倍近い30億円にする計画だ。

 皮肉なのは、同事業の成長の原動力が、太陽電池産業の「勝ち組」となっている中国メーカーであることだ。すでに世界の太陽光パネルの生産量の40%以上が中国製であり、唯一最大の武器であるコスト競争力で、「1年で約20%という価格下落の渦に国内メーカーを巻き込みつつある」(投資アナリスト)。高品質であっても、コストが高い日本製パネルは、世界市場で徐々に包囲網が狭まっているのが現実だ。

 昨年から本格的に売り込みをかけているダイキンだが、採用を決めた5社はいずれも海外の大手太陽電池メーカー。国内勢にも期待をかけるが、ビジネスチャンスを求めると、おのずと視線は国外に注がれることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)

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