この状況を解決する唯一の方策は、“全国一体”の送電会社を作ることだ。

 全国各地に電気を送るとき、途中に極めて非効率で使いにくい設備があれば、そこに設備投資をして改善が図られるのは必然だ。設備投資のインセンティブは、現在の10電力体制とはまるで異なり改善されるだろう。

 送電網の全国一体化は、自然エネルギーの拡大にも不可欠だ。今後、全量買取制度が導入されれば、北海道から東北にかけては風力発電や地熱発電の有望な地域だ。そこで発電された大量の自然エネルギー電力は、東京などの大電力需要地に送れる体制が不可欠だからだ。

 また風力発電や太陽光発電を大量に系統に導入するときに、天然ガスや水力発電、揚水発電などをフルに活用して需給調整する必要がある。その点においても、全国一体で需給調整できる送電網の全国一体化が望ましい。

 発送電分離は、送配電と発電を切り離すだけでは不十分なのである。切り離したうえで、全国一体型にすることが望ましい。

周波数の東西統一は
送電線一体化の必須課題ではない

 送電線の全国一体化に向けて懸念されるのが、東西の周波数の違いである。

 しかし、結論から言えば、それは絶対的な課題ではない。解決策は大きく2つある。

 1つは、時間をかけて周波数を統一することだ。

 この場合、家庭に関しては、関東と関西を転勤しても何も問題がないことから明らかなように、何ら問題ない。問題視されるのは家庭より大きな工場のモーター系で、これは個別に方策を講じる必要がある。設備の入れ替えが効率的なのかインバーターの敷設がいいのか、変電所単位で一つ一つチェックを進めて対応が完了したところからオセロゲームのように変えていけばいい。作業に約10年かければ、それほどコストはかからないはずだ。実現できる可能性は高い。