もう1つは、東西の周波数は異なるまま、日本を縦貫する直流送電線網(HVDC)、すなわち日本版「スーパーグリッド」を作り、どんな形で発電してもそこに乗せてしまう方法だ。
実際に、スウェーデンには600万kWを通す高圧送電線が背骨のように貫かれている。数百kmも海を隔てた他国とも、高圧直流送電線でつながれている。あとはインバーターで両端の周波数を変えるだけで需要家に届くため、日本でもできないことはないのではないか。
いずれにしても、洋上風力によって発電された電気を北海道から送るとなれば、大容量のスーパーグリッドが不可欠になる。自然エネルギーが普及するまでの間、バックアップとして天然ガスや揚水発電を使う場合も、スーパーグリッドが日本全体を縦貫していれば、容易に送電できる。これらは「将来のスマートグリッド」とは違って、すでに「できあがった技術」である。
“スマート”より“スーパー”グリッドの
整備こそが喫緊の課題だ
発送電分離後の一体化について、まずは東日本と西日本の二つのブロックで別々に進めるという考え方もある。しかし、できれば一気呵成にやってしまったほうが良い。
東西を統合するのに100年かかってしまっては意味がないからだ。新しい電力市場の整備期間として、東電買収スキーム(安定供給部門の一時国有化と再民営化)と併せた改革で、おおむね3年という時限を設けるべきだろう。
日本で「過剰に」ともいえるほど注目されている「スマートグリッド」は、短期的な解決策ではない。10年単位の時間がかかると見るべきだ。すでに完成された技術であるスーパーグリッドの整備に焦点を当てるべきではないか。