前回のコラムでは、日本企業の人事部には、人を基軸に戦略を策定し変革を主導する「人材マネジメント型企業変革リーダー」の役割が求められていることを述べた。具体的には、雇用保障を堅持しつつ社員一人ひとりの志を聞き、全社最適の観点でラインときめ細かく人事情報を擦り合わせして、異動と配置を行い、それを経営パフォーマンス向上に繋げることである。
ただし、人事部は全ての人材の異動に関与するわけではない。むしろキャリア開発の一切をラインに任せるべき人材もいるし、個人主導で自律的にキャリア開発を行う人材もいる。また人材の類型によって、適切な雇用形態や効果的なインセンティブ制度も異なる。今回のコラムでは、異なるタイプの人材をいかに組み合わせ処遇するのがよいかという問題、すなわち「人材アーキテクチャ」を考えてみたい。
「Make」か「Buy」の選択問題
人材類型別管理のあり方を理論的・実践的に捉えようとするのが「人材アーキテクチャ」(human resource architecture)という考え方である。
「アーキテクチャ」とは一般に人工物システムの構築に関わる設計構想であり、そのシステムの「切り分け方」と、分けた構成要素間の「つなぎ方」に関する基本的な考え方である。このような概念を用いて製品開発や組織改革の法則性を見出そうとする製品・組織アーキテクチャの研究も、盛んになってきた。
同様に、アーキテクチャという考え方を雇用に応用するのが人材アーキテクチャ論であり、2000年前後からアメリカのみならず日本でも盛んに議論されるようになってきた。代表的な論文が、レパックとスネル(Lepak & Snell)の「人材アーキテクチャ―人的資源の配分と開発の理論」である。