ホンダの業績が回復基調にある。グループ販売台数は2016年度に500万台を突破し、17年度も好調を維持する見通しだ。だが、“質”重視の「ホンダらしさ」はいまだ見えてこない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)
「決算は上々だし、米国の値引き競争と距離を置く堅実経営も評価できる。なのに株価はパッとしない」
ある市場関係者は、ホンダの株価についてそう首をかしげる。
ホンダが先月末に発表した2016年度の営業利益は8407億円。前年度に比べ67%の大幅増益となり、当期純利益は6165億円を確保した(図(1))。17年度の営業利益は減少するものの、為替の影響などを除いた実力値では、コストダウン効果などで433億円の増益見通しだ(図(2))。
だが、こうした決算の好調ぶりとは裏腹に株価は下落し、今月19日には3046円と年初来安値を更新。2月中旬の高値時から約2割減となり、好調決算も株価下落の歯止めとはならなかった。
なぜか。新車販売台数は好調そのものだ。
米国では昨年6月と12月、新型の「リッジライン」と「CR-V」を相次いで投入し、四輪車販売台数は160万台を超えて、歴代最高記録を更新した。
さらに中国でもCR-V、「ヴェゼル」「XR-V」「アコード」「シビック」などが売れ行き好調で、初の130万台超え。日本国内でも周知の通り、ヴェゼルがスポーツタイプ多目的車(SUV)の新車販売台数で3年連続1位を獲得するなど勢いに乗っている。
16年度は、これら新車販売の好調に加え、タカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)費用が大幅に減り、年金会計処理の変更が利益を大きく押し上げた要因となった。
一方、17年度の業界における最大のリスクは、米国市場での販売競争の激化だが、ホンダは「値下げ競争に巻き込まれないようインセンティブ(販売奨励金)を抑える」(倉石誠司副社長)ことを明言している。
強気の背景には、米国におけるホンダの販売台数の約3割を占めるとされる「オデッセイ」とアコードの新型が、今年投入されることにある。
モルガン・スタンレーMUFG証券の磯崎仁アナリストは、「17年度の後半以降は、2車種のフルモデルチェンジによってインセンティブの抑制効果が期待できる。業績の上方修正もあり得る」と予想する。