12月16日にFRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートの誘導目標を1%から0~0.25%に引き下げた。0.3%の日本とついに逆転した格好だ。ただ、FFレートの実効値は、利下げ前から0.2%を切っており、利下げ自体は現状追認にすぎない。
肝心なのは「実質ゼロ金利」ではなく、時間軸効果とリスク資産買い入れ増による量的緩和拡大だ。
利下げを表明した声明文の中で、FRBはFFレートを低水準で“しばらくのあいだ”維持することを示唆し、時間軸効果で長期金利を抑制する姿勢を示した。
FRBはこれまでもCP(コマーシャルペーパー)などリスク資産を買い入れてきたが、今回はそれをさらに拡大する姿勢を見せた。
また長期国債買い入れの効果を見極めているとし、近い将来の実施をにおわせた。すでに始めている住宅公社の債券と同社保証住宅ローン担保債券の購入増大、家計と中小企業への信用供与を目的にした資産担保証券を担保とする貸出制度創設の意向も明らかにした。
長期金利低下で住宅ローンなど各種金利の低下を促し、リスク資産の買い入れで機能不全の金融市場を直接支える狙いだ。
これらの施策でFRBの資産膨張に拍車がかかるのは必至だ。それは結果として信認悪化、ドル不安につながる。金利低下もドル安要因だ。経常赤字国の米国において、財政赤字拡大が想定され、金利が低下すれば海外からの資金流入が細りドルを下落させる。
だが、「FRBは利下げでドル安になっても構わないとの判断に違いない」と佐々木融・JPモルガン・チェース銀行チーフFXストラテジストは見ている。ドル安は苦境に喘ぐ自動車産業をはじめとして輸出にはプラスに働くからだ。
今回の政策変更は、通貨の番人たるプライドを捨て、資産劣化もドル信認悪化も顧みず、信用収縮と景気後退に歯止めをかけようとするFRBの一心不乱ぶりを浮き彫りにする。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 竹田孝洋)