復興基本法の成立を受けて司令塔となる復興対策本部が設置されたほか、復興推進会議による「復興への提言」が答申されたことで、東日本大震災からの復興に向けた推進体制がようやく整ってきた。今後、本格的な復興事業推進に向けた補正予算編成が求められており、10兆円超の財政支出が必要との見方もある。
しかしがら、現状、具体的な「復興計画」の全体像は示されておらず、総事業規模や財源は明確ではない。そこで本稿では、復興事業費についての考え方を整理したうえで、復興財源のあり方について考察する。なお、復興財源として、財政支出のほか民間資金の活用も考えられるが、本稿では前者についてのみ検討する。
「阪神・淡路」の経験に基づく
推計の4つの留意点
復興事業費の規模を検討する際、阪神・淡路大震災の経験が参考になる。阪神・淡路大震災での資本ストックの被害額は9.9兆円、「阪神・淡路震災復興計画」の総事業費は16.3兆円であった(次ページ図表1)。一方、東日本大震災での資本ストックの被害額は16.9兆円(内閣府)とされており、阪神・淡路大震災の経験から復興事業費のおおよその規模が計算できる。しかしながら、以下の点に留意する必要がある。
第1は、復旧事業と復興事業の比率が不明な点である。社会資本等を震災前の状態に戻す復旧事業だけの場合と、それらの高度化等を通じて活力を高める復興事業も行う場合とでは、総事業費の規模は異なろう。
東日本大震災の復興構想では、自然エネルギー活用型地域の建設などの方向性が示されており、総事業費にはこうした事情が反映されなければならない。しかしながら、単純な比例計算では、暗黙のうちに「阪神・淡路」での復旧事業と復興事業の比率を前提とすることになり、計算結果が真に必要な規模から大きく乖離するかもしれない。
第2は、上記の被害額及び事業費のデータに民間部門が含まれている点である。したがって、これらをもとに単純に比例計算した28兆円(=16.9÷9.9×6.3兆円)を、東日本大震災の復興事業に係る財政負担とするのは適当ではない。