「専有する」とは、排他的に保有するという意味なので、演奏権を「専有する」著作者以外の者による演奏は、著作者から許諾を得るか、法律上許される使用(後述の非営利演奏や引用等)でない限り、演奏権の侵害となります。

――今回の事案について、今後どのような点が裁判の争点になると思われますか。

 音楽教室の教師による演奏の問題に焦点をあてると、今回の事案の主な論点は、(1)音楽教室の生徒が「公衆」にあたるか、(2)レッスンで教えるための演奏が「直接聞かせることを目的」とした演奏にあたるか、の2点だと考えています。

 (1)については、おそらく多くの音楽教室では教師と一人もしくは少人数で行うレッスンが想定されているため、生徒は「公衆」とはいえないのではないかという素朴な疑問があると思います。著作権法上、「公衆」は特定かつ多数を含むと定義されており、「特定かつ少数」以外のすべての場合を含み、公衆の一般的な意味より広い概念となっています。確かに音楽教室では一人もしくは少人数の生徒相手に教授することが想定されていますが、運営者は特別な人的関係をもたない生徒を随時募集し迎え入れていることから、生徒は「公衆」といえるというのが従来の裁判所の理解です。

 (2)については、音楽教室における楽曲演奏が、「教育」目的、「演奏技術の習得」目的であるから、「聞かせる」目的ではなく、演奏権の侵害にはならないのではないかという問題提起です。ここは見解がわかれるところだと思います。音楽教室での教師の演奏は、楽曲の一部分を断片的に演奏することがほとんどではないかと思われます。そのような演奏が果たして「聞かせる」目的にあたるといっていいのかについては、慎重に判断されなければならないと思います。もっとも、少なくとも生徒が聞くことを前提に教師が演奏するのは事実ですので、「聞かせる」目的であるとの判断がなされることもあり得ると思います。

――「非営利の演奏」としては認められないのでしょうか。

 著作権法は、非営利目的で、かつ聴衆から料金を受けず、演奏者に報酬も支払われない場合には(非営利演奏)、楽曲の著作者から許諾を得ずに無償で楽曲を演奏することができると定めています(著作権法38条1項)。

 参考:「チャリティコンサートでも著作権使用料を支払う必要があるか」