また、レッスン中、教師は模範演奏をせずに生徒に弾かせるだけならばより権利侵害とは認められにくいと考えられますが、社会実態として同じといえる行為にもかかわらず、権利侵害にあたるかの結論に差異が生じてしまう不都合もありそうです。

3.ヤマハ音楽振興会側の申し立てが認められた場合

―― 一方で、ヤマハ音楽振興会側の申し立てが正しいと認められた場合、どのような影響が考えられるでしょうか。

 個人教室は、JASRACの方針として当面徴収対象から除外されているにすぎず、ヤマハのような音楽教室に対して演奏権が及ぶと判断された場合には、将来徴収対象に含まれるおそれをはらんでいます。よって、ヤマハの主張が認められた場合、個人教室の徴収されない地位は安泰のものとなるでしょう。

 また、音楽教室が、ある特定の著作者の楽曲を教授することを前面に押し出して生徒を募集する等、楽曲を宣伝目的(教育目的を超えた営利目的)で利用する場合にも徴収されないことになり、音楽教室は当該楽曲で利益を得るにもかかわらず作曲家・作詞家には利益が還元されないという問題が生じ得ます。

 なお、JASRACはこれまでフィットネスクラブ、カルチャーセンター、ダンス教室、カラオケ教室と、徐々に徴収対象を広げてきました。音楽教室での楽曲使用に演奏権が及ばないとなると、これらの団体を徴収対象としていることとの不公平感が生まれるかもしれません。ただ、ダンス教室等はそもそもCD等により音楽を再生しており、生徒たちはより著作物の演奏を享受している度合いは強いと言えそうですから、今回の音楽教室の事案と全く同じ論理があてはまるものではないと思われます。