4.ピアニストとしての見解は

――今回の事案について、ピアニストでもある橋本先生の見解を教えてください。

 音楽業界ではJASRACの徴収に反対の立場が極めて多いと聞いています。今回の事案でも、「音楽教育を守る会」が立ち上がり、音楽教育に取り組む約300の企業、団体がJASRACからの徴収に反対しています。同会は、音楽文化を守るために徴収に反対するという立場をとり、今回の事案が次世代の音楽家輩出にも大きな影響を与えると主張していますが、ここではその主張の意味をもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

4-1.教育目的であれば無償で使えるべきでは?

 守る会に賛同している立場でも、コンサートホールで第三者が著作権を有する楽曲を演奏する際にJASRACに使用料を支払うことには抵抗を感じない方が多いのではないかと思います。それは、舞台での演奏は、楽曲の提示そのものにより利益を得る構造が明白であるからです(聴衆も、まさに楽曲を聞くためにホールに足を運んでいます)。他方、音楽教室の利益は、教師が曲の解釈や表現法を通して生徒の演奏能力を上げることによって得られるもので、楽曲の提示によるものではないといえそうです。レッスン中に教師が模範演奏をすることがあっても、それはあくまで教授行為に付随する行為にすぎません(生徒は模範演奏を聞くためではなく、演奏方法の習得のために教室に通っています)。このような点で、コンサートホールによる演奏とは根本的に異なるのではないかという問題意識が、守る会の主張の根底にあるのではないかと思われます。