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日本航空(JAL)が、ジェットスター航空(オーストラリア)と共同で格安航空会社(LCC)の設立検討を進めている。JAL側は「まだ具体的な話は決まっていない」としているが、時代の流れは確実にLCCに向かっている。
ライバルの全日本空輸(ANA)はひと足早く、香港の投資会社と共同で国内初のLCC、ピーチ・アビエーションを設立。来年春には、関西国際空港から福岡、新千歳、さらに仁川(韓国)に国際線も飛ばす計画だ。
日本人には、まださほどなじみのないLCCだが、アジアでは航空シェアの2割、欧州に至っては4割ものシェアを握る。
近年、アジアのLCCが日本にも就航してきている。前述したジェットスター航空をはじめ、春秋航空(中国)、エア・アジアX(マレーシア)、セブパシフィック航空(フィリピン)などが、地方空港を中心に国際線を飛ばし始めているのだ。
「ANA本体と顧客を奪い合うかもしれないが、それも覚悟のうえ」。伊東信一郎・ANA社長がこう話すように、海外勢の成功を横目で眺めるよりは、自ら市場に打って出ざるをえない業界環境になってきている。
一方、経営再建中のJALはかねがね「LCCについては研究中」(大西賢社長)と、明言を避けてきた。しかし、2012年度中の再上場を目指す以上、リストラとコスト削減による利益の捻出だけでなく、成長戦略を打ち出さなければならない。「LCCは、そのためには欠かせないメニューの一つ」(業界関係者)といわれていた。
もっとも、ANAやJALのような伝統的エアラインがLCCを経営しても、成功するかどうかは未知数。人件費が高い日本で、海外勢に負けないLCCをつくるためには、そうとうに知恵を絞らなければならない。顧客にとっては朗報だが、エアラインにとっては未知の世界への挑戦だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)