飛行機に乗ったことのない社員が
なぜTOEIC 965点?

 私がTOEICを初めて受験したのは、63歳のとき。
「社員に受験を義務化し、スコアに応じて手当を変えているのに、社長が受験しないのはフェアではない」と思い、受験しました。

 結果は855点。そのときの社員の最高得点は、965点でした。
 会社が英語力アップを支援し続けた結果、MEBO(→本書 参照)で独立した当時12人いた500点未満の正社員は現在4人まで減りました。

 システム機器部の谷口透は、入社時に、TOEIC965点という高スコアを取っています。
 しかし彼は、日本レーザーでトップクラスの英語力を持っていながら、英会話学校に通ったことも、海外留学の経験もないそうです。
 それどころか、当社に入社するまで、飛行機に乗ったこともありませんでした。
 彼の英語歴は特別なものではなく、「学校英語」を学んだだけです。英語に触れたのは、中学に入学してから。

 それなのにどうして、高得点を獲得できたのでしょうか。
 彼は、1歳のときに父親を亡くしています
 父親は生前、母親に、

「これからの時代は、英語が絶対に必要になるから、しっかり勉強させてほしい」

 と頼んでいたそうです。
 そのことを知った彼は、父親の教えを守り、中学への入学を機に、英語の勉強を始めました。

 しかし、経済的な理由で、塾や英会話学校に通うことはできません。

 そこで彼は、中高6年間、英語の教科書(中1から高3まで計6冊)を暗記するまで音読することにした。

 そして見事、神戸市外国語大学に入学しました。

 大学に入ったあとも、彼の努力は続きます。「英語をマスターしたい」という友人と、「今日から卒業するまで、英語だけで会話をしよう」と約束して、一切日本語を使わなかったそうです。

 彼の英語力は、愚直な努力の成果にほかなりません。
 特別な教育を受けなくても、海外に留学しなくても、「中学、高校の教科書を何度も音読する」だけで英語力は身につくのです。

 彼はその後、ほぼ満点の985点を獲得しています。
 谷口は、英語学習のすばらしいロールモデルと言えるでしょう。