結婚してほどなく、夫に、1年間の上海勤務の辞令が出たのです。「退社しなければならない」と悩んでいた方に、私は退社しなくてすむよう海外での在宅勤務を認めました。
メールや電話で東京本社や取引先などに連絡をする仕事です(1年後、東京本社に戻ってきました)。
ところが、方が上海にいる間は、彼女が担当していたドイツのメーカーの製品がなかなか受注できませんでした。
方が専属で担当しており、彼女以外に、十分なフォローができなかったことが原因でした。
「この人でなければ、この仕事はわからない」という属人的な状態になっていたのです。
ひとり体制では、社員に何かあったときに、取引先や仕事を失いかねない。そう思った私は、ダブルアサインメントを導入することにしました。
現在、営業の場合は、男性と女性がパートナーを組み、どちらかが休んでも業務が進むようにしています。
経理や人事などの専門職は、ダブルアサインメントが難しい部門ですが、男性上司との共有をしています。
管理部長の別府雅道は、私がボストンの米国支配人をしていたときの部下で駐在員の人事管理と経理の決算業務を行う管理部門担当でした。
それだけに、2人の女性の課長が不在になっても業務は滞らないのです。
ダブルアサインメントは、女性活躍の条件だけではなく、会社としてのリスク対策でも有効です。
業務部・販売促進グループ課長の橋本和世は、ダブルアサインメントや女性社員の活躍の裏側には、「女性社員に対する男性社員の公平性がある」と感じています。
子育て中の女性とダブルアサインメントをする場合、男性側に負担がかかることがあります。 それでも売上は2人でシェアするわけですから、普通なら男性側から不満が出ても仕方がありません。
けれど、当社の男性社員には、抵抗感がなく、不満や不公平感を口にすることがありません。
日本レーザーの社員が他人を妬まないのは、自己効力感が育っているからかもしれません。
社員の多くは、他人と比較すること自体に興味がないようです。
彼らにとって大事なのは、自分のやりたいことをやり、自分のやるべきことをきちんと遂行することで、それをやるだけの自信も持っている。
だから、他人の足を引っ張る必要がないのです。