では、顧客の創造をしなくてもいい企業は、何をするのか。需要は間違いなく取り込めるわけですから、ほかに考えることは、供給をいかに大量に安く行うのか、という1点です。電力会社にとって、この供給の問題を解決する手段が原発であり、それが原発推進の大きな原動力になってきました。だからこそ、用地買収のためにあの手この手で地元を懐柔し、有名人やタレントを使い原発の安全性をPRし、政治家や監督官庁、学者、マスコミを巻き込んだ“原子力ムラ”を形成するにいたりました。
立ち止まって考えれば、自社の商品そのものを宣伝するよりも、製造設備の安全性を熱心に宣伝するというもの奇妙なことです。その奇妙さの裏側にあるものが、今回の事故で図らずも露呈することになりました。
「想定外=都合の悪いこと」?
意思決定をする上で、一番大切なことは
原子力ムラが作りあげた原発の安全神話。その神話がもろくも崩れ去ったわけですが、事故発生後、当事者の口からは“想定外”という言葉が発せられました。この“想定外”についてもドラッカーは『経営者の条件』の中で「最も危険な決定」として、次のように厳しく断じています。