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トランプ現象が生んだ皮肉
オールドメディアの読者が急増

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第432回】 2017年6月16日
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報道機関が自らの強みを問い直す

 なかでも凄まじい快進撃を見せているのは、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストだ。ことにここ最近のトランプ政権の動きは目が離せない状況になっており、この2紙のスクープに釘付けになっている読者も多い。

 マイケル・フリン大統領補佐官を解任に追い込んだのは、同氏がロシア大使館関係者とやりとりしていたことをマイク・ペンス大統領に明らかにしなかったとすっぱ抜いたワシントン・ポストの報道だった。

 一方、トランプ大統領によって解任された元FBI長官ジェームス・コミーのメモが友人を介して手渡された先は、ニューヨーク・タイムズだった。トランプ大統領との会談を詳細にわたって記し、これが選挙戦中のトランプ陣営とロシアとの関係を捜査するために、ロバート・ミュラー氏の特別検査官任命につながった。

 2紙はいずれもホワイトハウス関連取材にあたる記者を増員し、調査を行うバックアップ体制も強化しているという。トランプ大統領や報道官の発言をファクトチェックすることはもとより、論説にも力が入っていて、確固とした発信主体となっている。

 この2紙以外、また上述したメディア以外にも、ニューヨーカー誌、テレビのCNN、PBSなど、硬派で正攻法のニュースメディアが、政権内部の確執、大統領とかつてのトランプ・ビジネスとのつながり、元ロビイストの政権関連スタッフとしての雇用など数々の問題を取り上げている。

 調査報道のプロプブリカによると、トランプ時代のジャーナリズムを機能させていくために、他社が報じていることにはリソースをかけず、自社の強みに集中したり、調査部分では他社と協力体制を敷いたりしているという。

 フェイクニュースが溢れる中で、まともなジャーナリズムを遂行するメディアと、それをサポートする読者の関係がはっきりと見られる。これらニュースメディアは、行政のチェック機構だけではなく、今や共和党多数派を占めて動きの鈍い議会に代わる「国民議会」とも呼ばれているほどだ。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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