振られた仕事に「新たな価値」を加えるために必要なこと

 では、この差を生み出している要因はいったい何なのでしょうか。なぜ同期は、仕事にどんどん新たな価値を付け加えられるのか。できる同期を必死に観察していると、とてもシンプルな理由が浮かび上がってきました。それは、仕事の「目的」を確認できているかどうかです。できる同期は、ことあるごとに振られた仕事の目的を確認していました。

上司「○○くん、明日の14時から会議室を押さえておいて」
できる同期「かしこまりました。ところで、何の打ち合わせでしょうか?」
上司「クライアントへの振り返り報告だ」
できる同期「それであれば、広めの会議室でプロジェクターも準備しておきますね」
上司「サンキュー(あいつ、気が利くな)」

 たった一言です。打ち合わせの「目的」を聞けているから、それに合わせたスペースや指示以外の必要な備品が思いつきます。エクセルの「使用目的」が聞けているから、その目的に合った項目や機能を追加したり、それ以外に必要な資料の提案もできます。振られた仕事の目的を聞く。たったそれだけで、彼は仕事に新たな価値を生み出し、上司の評価を上げていたのです。

 これに気づいたぼくは、自分にひとつだけ約束をしました。それは、仕事を振られたとき、「はい、わかりました」と言って作業に移る前に、一言だけ“ある言葉”を追加することです。それは、「このタスク(仕事)の目的は何でしょう?」 という一言です。これを付け加えることだけを徹底したのです。

 これを徹底することで、ぼくは与えられた仕事以外の必要なタスクなどを提案できるようになりました。目的を聞くことで、そのタスクの本質をつかみ、上司の指示に新たな価値を加えることができるようになったのです。さらに、常に「目的は何だろうか?」と考え続けることで、無駄な遠回りをすることがなくなり、上司とも本質的な議論ができるようになりました。もちろん、周りからの評価は劇的に上がりました。

「あいつは気が利く。クライアントへの提案のために、競合企業の状況について有識者にインタビューしてほしいと頼んだら、今後の業界のトレンド予測やその理由についてまで掘り下げて情報を持ってきてくれた」「○○業界の分析のためにA社の資料を用意してくれと言ったら、競合のB社、C社の分まで調べてくれたよ」

「一生懸命だけど、戦力とは言いがたいよね」と言われていたぼくでしたが、常に目的を考えて動く姿勢を貫いたことで、周りからどんどん信頼されるようになったのです。結果、メンバーを数人つけたプロジェクトを進める立場に選んでもらったり、クライアントとの重要なミーティングでプレゼンを任せてもらったりするようになりました。そしてその年、ぼくは最高の評価をもらうことができたのです。もちろんこれだけが要因ではないでしょうが、「目的は何だろうか?」と自問自答し続け、上司に確認し続けたことが、その大きな理由のひとつであったことは間違いありません。

「仕事の目的を考える」。これを意識するだけで、評価はまったく変わってくるのです。