英国内では、EUの前提となっている「単一市場=物、サービス、資本、人の自由な移動」をすべて一切排除する強硬路線(「ハードブレグジット」)か、離脱後も部分的にEU市場に自由にアクセスする権利を持つ維持する柔軟路線(「ソフトブレグジット」)に分かれている。

 ハード派を標榜する保守党も、「物、サービス、資本」の自由な移動は大歓迎だが、移民問題は強硬派。EUからの移民流入が社会問題化していることを深刻に受け止め、「人」の自由な移動を停止するためなら、その他の移動の自由を失ってもかまわない、というスタンスだ。(これに対してEU側は、4つの移動は1パッケージであり、このうちの1つの移動だけを停止するような措置は認めないとしている)。

 対するソフト派の労働党は「仕事と経済」を守ることをEU離脱交渉の最優先事項に掲げ、単一市場へのアクセスを維持することを強調してきた。

 やや分かりにくいのは、メイ首相のスタンスだ。明確な「ハードブレグジット」ではない点だ。 

英国内は強硬派、柔軟派に分裂
不安定なメイ首相の基盤

 今年1月のメイ首相のスピーチは、初めて公的にEU離脱の方針に言及する場として注目を集めたが、その内容を「ハードブレグジット示唆」と報道したメディアを、メイ首相は、自身はソフトブレグジット派でもハードブレグジット派でもないと牽制した。

 党首の考え方と、保守党で支配的な思想との微妙なズレは、今後も保守党内でくすぶり続け、政治不安定の一因となるだろう。

 世論は分断された状態だし、さらには先の総選挙での保守党の惨敗が、ブレグジットの行方を一層、不透明なものにした。

 議会では、どの党も過半数をとれない「hung parliament(宙ぶらりんの議会)」の状況。メイ首相は重要法案等でEU離脱支持を掲げる北アイルランドの民主統一等(DUP、10議席)と連携する方向だが、この10議席を加えても議席数は328と、過半数の326を2議席、上回るに過ぎない。

 続投を表明したメイ首相だが、側近のアドバイザー2人が選挙敗北で引責辞任し、孤立した状況だ。

「総選挙によって交渉内容協議の時間を浪費」した挙句、EUとの離脱交渉では、英国内から「保守党内ハードブレグジット推進派からの圧力」にさらされ、一方で「ソフトブレグジットを掲げる野党・労働党との交渉」は難航が予想される。

 一方で「ソフトブレグジット」を支持している産業界は17日、英経営者協会(IoD)や英国商工会議所(BCC)、英産業連盟(CBI)等の会長らが、連名で「ハードブレグジット」の再考を要求する声明を発表。単一市場へのアクセス権限を残すことを交渉原則とするよう求めた。

 選挙により保守党の影響力が弱まったことで、「ソフトブレグジット」の可能性が高まったとして、一部では選挙結果を好感する向きすらある。