「同時性」の足かせから
逃れられないサービス業

 一般的に製造業では、企業側と消費者側の「同時性」は要求されない。企業側は、自らの生産計画を立案し、最適な生産工程で商品を製造し、在庫として備蓄する。消費者側も、自分の都合で好きな時に、直接的あるいは間接的に商品を購買する。企業側も消費者側も「同時性」が要求されないため、おのおのの時間効率を自律的に高めることが可能である。

 一方、サービス業の場合はそうはいかない。例えば美容師のサービス(髪を切ったり、染めたりなど)を在庫しておいて、客が多く来たときにその在庫を販売する、などということは不可能だからである。

 耐久財の場合は中古市場が存在するため、在庫過多となったとしてもそれを換価する方法がある。しかし、美容師のサービスの中古市場は存在しない。雇っている美容師が出勤し、客が来なければ、その美容師の労働していなかった時間を中古市場で売ることはできない。

 つまり、美容師と客は、同じ時間に同じ場所にいなくては、髪を切ったり染めたりする美容サービスは成立しないのである。こうした“制約条件”は、経営者にとって大きな重荷である。美容室の美容師、携帯販売店の店員、ヨガ教室のインストラクターなど、「同時性」を保持しながらサービスを行って、初めて売り上げを上げられるのがサービス業なのだ。

 製造業とサービス業の「生産性格差」は、必ずしも製造業がサービス業に比べて優秀だからという理由によって生じているわけではない。「同時性」という“足かせ”を付けられたサービス業は、もともと大きな“ハンディ”を背負わされていると言えるのである。

 歴史的に「同時性」の問題を、経済学はダイナミックプライシング(DP)で乗り越えようと試みてきたし、相当程度その試みに成功してきた。

 DPとは、時間や時期によって変動する需要に対し、値段を上下させることによって、対応する手法である。例えば、エアラインの座席がゴールデンウィークの時は高額となり、閑散期には安く提供されるといった仕組みがDPの典型例である。レストランやテーマパークなどのサービス業においても、今後はさらさらにDPが一般化することが重要なのではないだろうか。