それにしても、30~34才のまさに結婚適齢期の男性の配偶者のいる割合を比べれば、正社員の59.6%に対して非典型雇用が30.2%(約半分)、非典型雇用のうち「周辺フリーター」が16.8%、無職が15.8%(さらにその半分)という「事実の重み」の前には沈黙せざるを得ないものがある。同様に、既婚者の割合を年収別に20代、30代の男性についてみると、300万円未満では8~10%であるのに対して、300万円以上では25~40%と「300万円の壁」の存在が示唆されている。
男性の83%、女性の90%が結婚したいと望んでいるのにも関らず、である。結婚したくても簡単には結婚できない社会、このような社会が果たして正常な社会であると言えるのだろうか。急がば回れであるかもしれないが、一刻も早く成人した子どもを家から追い出して自立させ、雇用の流動化を実現しなくてはならないと考える。
女性の就労継続と
子育て世代の男性の長時間労働を抜本改革すべき
低所得化が進めば、共稼ぎ世帯の増加は自然の成り行きであろう。これからの少子化対策を考える上では共稼ぎ世帯を基準として施策を練る必要があるが、そのためにはわが国企業の労働慣行を根本から見直す必要がある。
その1つは、女性の就労継続の問題である。現在でも、出産前に仕事をしていた女性の約6割が出産を機に退職しており、育児休業利用者の割合こそ堅調に推移しているものの、出産前後で就労継続をしている女性の割合はこの20年間(!)でほとんど変化していない。 この厳しい状況を打破するためには、まず企業の側で「出産しても働くことが当然」「数年間の育児休業は一切ハンディにならない」「残業や転勤を(いわゆる)総合職の条件にしない」等の意識改革を徹底して行う必要があろう。
加えて男性の育児参加の問題がある。6歳未満の子どもを持つ夫の育児時間を国際比較してみると、わが国は1日平均約30分程度しかなく、欧米諸国の半分程度、家事の時間を加えても1時間程度と、欧米諸国の3分の1程度となっている。この原因は、子育て世代の男性の長時間労働にあると考えられる。わが国の子育て期にある30代男性の約5人に1人が週60時間以上の就業を行っており、他の世代に比べて最も高い水準となっている。これでは疲れて育児どころではないだろう。これについても「男性の育児休業は当然」「つきあい残業の撲滅」等、企業の側での抜本的な意識改革が必須であろう。