なぜ、企業の側で意識改革が進まず、旧態依然とした労働慣行が10年も20年も罷り通ってきたのだろうか。それは、私見では経営幹部のダイバーシティがほとんど進んでいないことが主因であろう。女性や若者、外国人を経営幹部に加えないが故に、わが国の企業の競争力が低下し、労働慣行や企業の意識が一向に刷新されないのだ。
このような現状に鑑みれば、ノルウェーで法定されているように上場基準にたとえば「役員の40%以上は女性」といったダイバーシティ条項を設けることも、もっと真剣に検討されて然るべきであると思われる。
蛇足ではあるが、ダイバーシティの進んだ欧米企業の株価は相対的に堅調で、旧態依然とした労働慣行を墨守しているわが国企業の株価が低迷しているという事実を付言しておく。
具体策のひとつは、
駅に24時間営業のこども園(保育所)を設置すること
女性の就労継続は企業の意識を変えるだけでは実現できない。働きながら子育てを行う女性をしっかりと側面から支える社会の仕組みを構築していかなければならないことは当然であるが、その第一歩は冒頭にも述べた待機児童の解消であろう。
報道によると長年の懸案であった幼保一体化について、政府はようやくこども園新設の腹を固めた模様であるが、待機児童の8割を占める3歳未満児の受け入れは義務づけず、一部の幼稚園や保育所は存続できるため、待機児童解消の可能性は未知数だという(7月28日朝日新聞)。
こども園を新設するのであれば誰が考えても、保育所と幼稚園はすべてこども園に一本化し、監督官庁も一元化(義務教育との連続性を考慮すれば文部科学省でいいと考える)するのが筋ではないか。もちろん、すべての待機児童の受け入れを、こども園に義務づけるべきであることは言うまでもない。こども園も小学校も同じであるべきだ。
株式会社やNPOの参入も当然だが、こども園の立地をどう考えるべきか。私見では通勤の実態を勘案すれば(企業内に設置するよりも)、通勤途上にあり移動のロスの少ない最寄り駅やターミナル駅に病児保育を含めた24時間こども園を設置することがより望ましいと考える。インセンティブとして、そのようなこども園を新設した駅に対しては、特例として建ぺい率や容積率を大幅に緩和したり、場合によっては建設費用を補助したりしてはどうか。そうすれば、こども園の保育料等を低く抑えることも可能になるだろう。
もちろん、駅のバリアフリー化も必須であるだろう。最近都心の地下鉄等ではホームドアの建設がさかんだが、グローバルな目線で見ればベビーカーや車椅子も使えるエスカレーターやエレベーターの新・増設の方がはるかに優先度が高いと考えるがどうか。なお、共稼ぎ世帯を基準として考えれば、少なくとも小学校の「放課後子どもプラン」の推進・拡充も、幼保一元化と並ぶ喫緊の課題であると考える。