
2024年の日本人の出生数は初めて70万人を割る見通しだが、深刻な少子化が進んでいるのは日本だけではない。「世界一幸せな国」と言われる北欧のフィンランドでも出生数は激減している。日本よりも社会保障が充実している国でも、少子化が加速しているのは一体なぜなのか。『北欧流 幸せになるためのウェルビーイング』(キラジェンヌ)の著者で、北欧流ワークライフデザイナーの芳子ビューエル氏に話を聞いた。(清談社 吉岡 暁)
「社会保障」を充実させても
少子化は解消されない?
厚生労働省が2月27日に公表した人口動態統計によると、2024年に日本で生まれた子どもの数(外国人を含む出生数)は72万988人で、日本人に限れば70万人を割る見通しだという。初めて出生数が80万人を割った22年から、わずか2年。9年連続で出生数は過去最低を記録し、専門家の試算よりも早いスピードで日本の少子化は進んでいる。
そんな少子化解消の鍵としてまず挙げられるのは「子育て支援をもっと充実させること」だろう。しかし、実際に日本よりも子育て支援が手厚い国の出生率が良いかというと実はそんなこともない。たとえば世界幸福度ランキングで昨年1位に輝いた北欧・フィンランドの出生率は、2023年で1.26と、記録が残っている1776年以降で最低水準を更新した。これは日本が2022年に記録した過去最低値と同水準であり、フィンランドの少子化は日本同様に深刻だ。にもかかわらずU.S. Newsが発表した「子育てしやすい国ランキング2023」で、フィンランドは3位にランクインしている。
実際、フィンランドの子育て政策は日本と比較しても非常に手厚いようだ。
「たとえば北欧には、妊娠期から親子をサポートするNeuvola(ネウボラ)という制度があります。北欧諸国で提供されている母子健康診査・子育て支援サービスの一つで、このサービスは母親が妊娠してから子どもが小学校入学前までの間、無料で利用できます。日本の母子健康手帳は主に妊婦検診から新生児の健康管理に使用しますが、ネウボラは小学校入学前までの長期的な健康管理と家族支援を提供します。また日本の妊婦健診などは一部自己負担が発生する場合がありますが、フィンランドでは完全無料。母子へのサポートが長期的で、自己負担がないことが特徴です」
そう話すのは、『北欧流 幸せになるためのウェルビーイング』(キラジェンヌ)の著者で北欧流ワークライフデザイナーとしても活躍する芳子ビューエル氏だ。では子育て支援が充実しているフィンランドで、出生率が低下した原因はどこにあるのだろうか。