人間は動物である。動物の一丁目一番地は、次の世代に命を引き継ぐことにある。すなわち、子どもを産みたい人がいつでも自由に子どもを産み、安心して子育てができる社会が人間の理想の社会だと考える。ひるがえってわが国の現状はどうか。これだけ少子化に悩みながら、たとえば保育所待機児童数については3年連続で増加している。なぜ、保育所待機児童の解消のような簡単なことが実現できないのだろうか。

 6月17日に公表された「子ども・子育て白書」を読むと、少子化対策として必要な処方箋はほとんど網羅されていると思われる。一般論として、この国の経済・社会が低迷を脱しきれない根本原因は、「分析の不足」にあるのではなく、決定的に「実行力が不足」していることに求められるのではないだろうか。

 ともあれ、「子ども・子育て白書」が指摘した問題点を踏まえて、子どもを産み、育てやすい社会を創っていくための政策の柱を考えてみよう。「子ども・子育て支援」の重要性は、社会保障・税一体改革成案の筆頭に置かれていることからも明らかであるのだから。

少子化の最大の要因は、
若い世代の非正規雇用の増加と低所得化である

 子育て世代の所得分布を見ると、30代では、1997年には年収500万~699万円層が最も多かったが、2007年には300万~399万円層が最多となっており、この10年間のわが国の若い世代の低所得化には凄まじいものがあることが読み取れる。この低所得化が未婚化・晩婚化をもたらし、少子化の最大の要因の1つになっている。低所得化の原因が非正規雇用の増加にあることは明らかだと思われるが、その抜本対策としては前回の当コラムで提言したように、成人した子どもの自立(家を出る仕組み化)と雇用市場の流動化が不可欠であろう。