男性にはあまりピンとこないが、女性のメークボックスには、「今ひとつ似合わなかった」「お土産にもらったけれど好きな香り(色)ではなかった」などの理由で、使い切れないままだったり、未開封の化粧品が数多くある。

 そんな「“眠っている化粧品”をお持ちください」という呼びかけで、東急百貨店(東京都渋谷区、二橋千裕社長)が、口紅やチーク、アイシャドー、マスカラ、ファンデーション、マニキュア、香水などを対象とした、コスメの無料回収サービス「コスメでチャリティー」を行った。

 2008年のリーマン・ショック以降、節約志向が強くなったことから、着なくなった衣類や不要な家電を金券などと交換に引き取る「下取りサービス」が、百貨店やスーパー、セレクトショップなど小売業界に急速に広がったことは記憶に新しい。

 これは「不要品を処分しつつ、環境に貢献できる」という生活者側のメリットを打ち出しながら、小売側は店に足を運んでもらえるという集客効果と、企業のイメージアップなどを期待したものだが、コスメの回収サービスは珍しい。というのも、衣料品や家電は、回収したものを循環させられる専門業者がいるのに対し、コスメは回収しても“出口”が用意できなかったことが理由として考えられる。今回、東急百貨店では、NPO法人 コフレ・プロジェクト(東京都港区、向田麻衣代表)とタイアップすることで、その課題をクリアした。

 コフレ・プロジェクトとは、09年から化粧品を通じた社会貢献活動に取り組んでいる団体。日本で回収した未使用の化粧品を使って、トルコやネパールの現地NGOとともに、女性たちに化粧を施す「お化粧ワークショップ」を実施し、精神的なケアや自尊心を取り戻すサポートをしている。また、現地に富裕層向けのサロンを開設して、貧しい女性たちがメーキャップアーティストとして働いて自立できる環境を整える活動もしており、メークの技術指導をする際に、日本から送った化粧品を利用。また、使用済みの化粧品は画材として提供し、アーティストとのコラボレーションイベントなどで使用している。

 東急百貨店が窓口となって集めたコスメも同様に活用することを前提に、5月21、22日に本店、東横店、吉祥寺店、たまプラーザ店に「コスメでチャリティー」の特設コーナーを設置したところ、2日間、4店舗合計で約620人が来店した。同社MD企画部のMD計画担当マネジャー・小川妙子氏は、「およそ5600個(使用済み約4600個、未使用品約1000個)のコスメを回収することができ、『誰かに喜んでもらえるのなら是非、役立ててもらいたい』という積極的な行動を促せた」と話し、「顧客の声などを聞いて、今後も、1年に1~2回のペースで実施できれば」と前向きな姿勢をみせる。

 コフレ・プロジェクトは、ドラッグストア(DgS)などでの展開にも意欲を示している。他の小売業に比べ、社会貢献活動に積極的なイメージがないDgSチャネルにとって、このような取り組みを導入することは、集客に結びつけられると同時に、顧客満足を高められる利点があり、検討の余地があるのではないだろうか。


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