全国のコンビニエンスストアで限定発売中の「キリン アイスプラスビール」。350ml缶217円(税込)。

 今年の夏は正直しんどい! エアコンの使用が控えられ、熱気のこもったオフィスからは「外のほうがよっぽど涼しいのでは」という声が聞こえてくる。日中の温度がとにかく高く、ふっと風が吹く夕方ともなれば、気温はあっても体感的に心地良くなるのが唯一の救いだろうか。

 そこで、例年なら仕事帰りのビアガーデンをオススメしたいところだが、今年は節電対策で営業時間や規模を縮小しているお店が多い。まっすぐ家に帰り、普段は飲まないビールの魅力に気づいた人、風呂上がりの一杯を新習慣としている人も多いのでは?

 市場の活性化と需要拡大を狙い、新商品の投入を図るビールメーカー各社。そのなかで、キリンの今夏の目玉は“氷を入れて飲むビール”だ。7月27日から全国のコンビニ限定で発売された「キリン アイスプラスビール」は、氷を入れるとコクが引き立つ新スタイルのビールである。

「ビールに氷?」と不思議がる人も多いかもしれない。だが同社の調査によると、男性の55%がビールに氷を入れて飲んだ経験があるそうだ。ということで、前述の調査で言うところの45%に含まれる筆者は、コンビニに走り、どんな具合かを試してみた。

 まず、氷とビールがシンメトリーであしらわれている缶デザインに目をひかれる。肝心の味はというと、『しっかりとした香味を実現すると共に、「すっきりした甘み」と「マイルドな苦味」を絶妙なバランスで味わえる』という謳い文句は伊達ではない。つまりは、なかなかイケるのだ! 氷が溶けた後だとさすがに水っぽさが増してしまうものの、地ビールを思わせる色合いといい、なめらかな口当たりでぐいぐいいける。

 そのうちに気づいた。氷があるだけ1回1回の注ぐ量が少なくて済み、一缶飲み干すには何度も注がなければならない。注ぐ回数が多いと、たくさん飲んだ気になって、結果それほどの酒量にならず、お財布にもやさしい……そういうことなのか!?

 氷を入れる理由を「節電対策の一環」とする声もあるが、メーカー側はあくまで「ビールの新しい楽しみ方の提案」としている。冷静に考えてみると、氷をつくるのにも電気がいるではないか! そうなると、エコロジーの観点からしてもっとも素晴らしい商品は、“ぬるくなっても美味しいビール”ということになる。

 ウィスキーをソーダ+氷で飲むハイボールブームの後押しもあり、発泡酒、新ジャンルに続く新たなカテゴリーに“氷入り”が加わるかも? キンキンに冷えたものほどよしとする日本人のビール嗜好が、変わるかもしれない。

(筒井健二/5時から作家塾(R)