こうした新しい環境を生き抜き、競争を勝ち抜いていくには、大規模な変革がよりいっそう求められている。そして変革が大きくなれば、より強力なリーダーシップが必要になる。

 軍隊に例えて考えてみよう。平時の軍隊は、階層の上から下まで運営と管理が行き届き、同時に上層部の優れたリーダーシップがあれば、普通大丈夫だろう。しかし戦時下では、あらゆる階層で優れたリーダーシップが必要になる。人々を突撃させるうまい方法など、だれにもわからない。つまり、彼らは、リーダーシップで率いていかなければならない。

 マネジメントは複雑さに対処し、リーダーシップは変化に対処するという役割の違いから、両者を特徴づける行動が見えてくる。マネジメントとリーダーシップどちらの行動体系にも、やるべきことを決定し、課題の達成に資する人脈や人間関係を築き、さらに組織メンバーにちゃんと仕事をさせるように努力する、ということである。とはいえ以上の3つの仕事をやり遂げるにも、両者ではやり方に違いがある。

 複雑さをマネジメントするために、まず計画と予算に着手する。つまり、将来(一般には、翌月や翌年)の目標を定め、その達成に向けて具体的な手順を決め、各計画を実現するための資源を配分する。これに対して、組織に建設的な改革を起こすためにリーダーシップを発揮する場合には、まず方向性を決める。将来(通常は、かなり遠い未来)ビジョンと、その実現に必要な変革を起こすための戦略を、まず立案する。

 マネジメントでは、立案した計画を達成できる能力を開発するために、組織づくりと人員配置を行う。具体的には、計画達成に必要な組織構造と1連の各業務を創設し、そこに適切な人材を配置し、彼ら彼女らに計画の内容を伝え、実行の責任を負わせて、実行状況をモニターする仕組みをつくるのだ。

 かたや、目的は同じでも、リーダーシップは、組織メンバーの心を1つにすることである。つまり、メンバーたちがビジョンを理解し、その実現に向けて努力を傾け、全員が1丸となれるように、新たな方向性を伝えるのだ。

 最後になるが、マネジメントは統制と問題解決によって計画の達成を確実にする。報告書やミーティングといった方法によって、公式および非公式に計画と実績を詳細にモニターし、そのギャップを突き止めて、問題解決の計画を立て、準備する。

一方、リーダーシップでは、ビジョンを達成するために、動機づけ、鼓舞する人間の欲求や価値観、感性など、根源的だがあまり表面に浮かび上がってこない要素に訴えかけることで、変革を阻む大きな障害があろうと、皆を正しい方向へ導き続ける。