ただし、そういった人材の能力を伸ばす一方、リーダーシップが強くてマネジメントが弱いと、問題であることを覚えておかなければならない。実際、逆の組み合わせも同じく問題だが、これよりも悪いケースもある。
現実として取り組まなければならないのは、優れたリーダーシップと強いマネジメントとを結びつけて、両者のバランスをうまく図り、活用することである。
もちろん、だれもがリーダーとしてもマネジャーとしても有能というわけではない。優れたマネジャーになる能力を持っていても、強力なリーダーにはなれないタイプもいれば、優れたリーダーの素質の持ち主でも、優秀なマネジャーになるのは難しいタイプもいる。賢い企業は、両方のタイプを重視し、組織の1員として活用することに取り組んでいる。
しかし、このような企業も、次代のリーダー人材を養成する段になると、「マネジャーとリーダーを両方こなせる人物はいない」という最近の文献を無視し、リーダー兼マネジャーを育成しようとしている。実際、リーダーシップとマネジメントの根本的な違いを理解すれば、一線級の人材に対して、リーダーシップとマネジメントの双方を教える訓練を着手できる。
マネジメントとリーダーシップの違い
複雑な状況にうまく対処するのが、マネジメントの役割である。マネジメントの手法や手順は、主として20世紀最大の進歩の1つ、大組織の出現によって生まれた。マネジメントがお粗末だと、複雑な企業は秩序を失い、存在そのものが脅かされてしまう。逆にしっかりしていれば、製品の品質や収益性といった重要な領域に、ある程度の秩序と一貫性がもたらされる。
これに対してリーダーシップの役割は、変化に対処することである。近年リーダーシップの重要性が高まっている理由の1つとして、ビジネスの世界で競争と変化が激しさを増していることが挙げられる。技術革新のスピードアップ、国際競争の激化、市場での規制緩和、資本集約型産業での過剰生産能力、気まぐれな石油カルテル、ジャンク債を武器にした乗っ取り屋、労働力の人口構成の変化などによって、競争の激化や目まぐるしい変化が生じている。結果、昨日と同じことを繰り返していたのでは、あるいは少しばかり改善した程度では、もはや成功は得られない。