このような状況では、コンティンジェンシー・プラン(緊急時対応計画)を立案し続けるはめになりかねず、はるかに重要な活動に振り向けるべき時間と意識をいたずらに費やすことになる。それでいて、会社が心底必要としている具体的な方向性は得られない。やがてマネジャーたちは、当然ながらひねくれ、計画立案プロセスは高度な政治ゲームに成り下がってしまう。

 計画立案が最もうまくいくのは、方向性の設定の代替手段ではなく、補完手段となった時である。優れた計画立案プロセスは、方向性が現実に即して設定されているかを検証するのに役立つ。同様に、方向性が設定するプロセスが優れていれば、現実的に実行可能な計画を立てることに集中できる。その結果、どのような計画が重要で、どのような計画が的外れなのか、明確に区別できる。

「人心の統合」vs.「組織編成と人員配置」

 近代組織の主たる特徴として、相互依存性が挙げられる。いっさい他者に依存していないという者など存在せず、社員の大半が、仕事、技術、マネジメント・システム、階層などを通じて、大勢の人々と結びついている。このような結びつきは、組織変革では、とりわけやっかいな問題へと発展する。

 各人が1列に並び、同じ方向を目指して一緒に動かないと、皆次々に転んでしまう。マネジメント教育を過剰に受け、リーダーシップ教育が不足している人の目には、同じ方向に向かって人々を動かすことは組織上の問題と映る。しかし、彼ら彼女らがやらなければならないのは、人々を「組織する」ことではなく、「1つにまとめる」ことである。

 マネジャーは、できる限り正確かつ効率的に計画を遂行できる人的システムを生み出すために組織をつくる。そのためには、通常、複雑に絡み合う意思決定を次から次へと片づけていかなければならない。

 たとえば、職務体系や指揮命令系統の選択、適材適所の人員配置、社員研修、社員への計画の説明、権限を委譲する者とその範囲などを決定する必要がある。また、計画を達成するための経済的インセンティブ、そして計画の現状をモニターする仕組みも欠かせない。これら組織に関する判断は、建築にまつわる判断に似ている。つまり、ある特定の環境にふさわしいものかである。