ただし、運営費交付金は維持するとの財務省からの確約は不可欠です。これがないと大学は取り組みません。一方で、本連載の前々回で述べたように、授業料引き上げは国際人権規約の趣旨にも適合する大学授業料無償化方針とは真っ向からぶつかることになり、矛盾してしまいます。だからこそ、指定国立大学の在り方とともに国民的議論が必要なのです。

 留学生からの授業料引き上げについても、米国等は学部生やビジネススクールなどの授業料は極めて高い一方で、大学院生については奨学金が充実しており授業料は実質タダなうえに生活費の補助もあるところが多いなか、非英語圏である日本が、留学生を集めるのは難しいので、大幅な値上げは難しいとの声もあります。

 しかし指定国立大学法人なら競争力もあるので、私個人的には、対象を限定したうえで、さらには、今、未開の学部留学生を増やし、そうした学生からは授業料を十分にとる可能性はあると考えています。大いに国民的議論をしてほしいところです。さらに、留学生を採用した日本企業の奨学金の提供などもしっかり議論していくべきです。

 また、日本のトップ大学の卒業生も今では世界中で活躍しています。卒業生と縁のあるアジアの企業、アジアのビリオネアからの資金獲得は、トップ校は真剣に取り組むべきです。もちろん、こうしたファンドレイジングには、専門人材の確保などの初期投資が必要ですが、私は、やるべきだと考えています。シカゴ大学は500人のファンドレイザーを抱えているそうです。

大学卒業を厳しくすることは妥当か?
中退者の増加は、産業構造転換に逆行も

 最後に、いくつか大学を巡って言われ続けてきたことに対してコメントしていきたいと思います。

 授業以外で学ばない文系大学生が放置されているのを見て、一部有識者のなかに、ヨーロッパのように大学生を中退させて、学びに緊張感をもたせるべきとの声もあります。

 確かに、フランスやドイツでは大学1年生は多いけど、どんどん中退していっています。日本の各大学は、留年はさせていますが、中退までは強く求めていないことも事実です(むしろ自主中退が問題)。ただ、欧州の大学で学生をどんどん中退させられるのは、国立大学でかつ授業料が無料だからです。しかも、欧州では若年失業者問題が深刻な社会問題となっています。

 まさに、中退を増やすのは高等教育修了者を減らすということを意味しており、先述したように、わが国の産業構造転換に逆行してしまいます。さらに、中退者に対して企業が求人を出してくれるとも思えないので、その人たちは無業者になるおそれが高い。

 特に日本企業の場合、ほとんどが新卒一括採用ルートで、そこからこぼれた人を大手企業が採用するはずがありませんので、若年失業者率は一挙に顕在化するでしょう。日本も国立大学の場合なら中退もさせられるでしょうが、授業料をそれなりにもらっている私立大学が中退率を上げることは難しいでしょう。