日本労働組合総連合会(連合)が未曽有の危機に見舞われている。働き方改革の目玉メニューである「高度プロフェッショナル制度」への対応をめぐり、連合執行部と傘下の下部組織との間にあつれきが生まれているのだ。背景にあるのは、連合組織の弱体化だ。産業界も、連合混乱のとばっちりを受けることになりそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
日本最大の労働組合のナショナルセンター、連合が異常事態に陥っている。
年収の高い専門職を対象にした「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の対応をめぐり、連合執行部と傘下の労組との間にあつれきが生まれているのだ。
高プロ制度は、この3月に策定された「働き方改革実行計画」に盛り込まれた目玉メニューの一つ。年収1075万円以上で、金融ディーラーなどの専門職に就く人を対象に、(労働基準法上の)労働時間規制から外す制度であり、この制度に「残業代」は存在しない。
かねて、連合は高プロ制度を含む労基法改正案を残業代ゼロ法案として反対の立場を貫いてきた。
混乱の発端は、7月13日にさかのぼる。連合の神津里季生会長が安倍首相に、「労基法改正案に関する要望書」を提出したのだ。
この行為により、連合は、実質的に高プロ制度を容認する姿勢を打ち出した。水面下では、連合執行部と政府自民党との間で根回しが進んでいたわけで、「民進党の支持母体である連合による裏切り行為」(労組関係者)とされた。
これに反発したのが、連合の下部組織だ。21日に開催された連合の中央執行委員会(中執委。主要労組幹部で構成)では、自治労や情報労連といった古参労組や地方労組から異論が続出した。安倍政権がぐらついているときに、なぜ頭を下げてまで反対したい法案を通さなければならないのか──。
27日に再集合した中執委でも意見集約は進まず、連合執行部は方針を「容認」から「反対」へ転換。連合執行部の統率力の欠如があらわになった。中でも、政財界との交渉窓口を担ってきた逢見直人事務局長(UAゼンセン出身)への風当たりは強い。