マタタビラクトンは
人間にも効果あり

 そんなマタタビラクトンだが、実は猫だけでなく人間にも「血行促進」や「疲労回復」などの効果があるとされている。その理由について藤井教授は「男性の精液や女性の子宮から分泌されるホルモンと似ているからではないか」と考察する。

「1982年に、その発見でノーベル医学生理学賞も受賞しているのが、『プロスタグランジン』という物質です。プロスタグランジンは男性の精液から発見され、前立腺から分泌されると考えられています。どのような働きをするのか長く解明されていなかったのですが、ここ20年くらいで生理のときに子宮を収縮させる作用があることが分かり、今では陣痛促進剤として使われています。また、血圧を上げたり下げたりする作用や血管拡張作用、発熱作用もあります。じつは、この『プロスタグランジン』と『マタタビラクトン』は構造の一部が似ているのです」

 ちなみに、北日本ではマタタビはお茶として嗜まれており、飲むと血行がよくなるとして、「食べる温泉」とも言われている。確かに血管拡張作用のあるプロスタグランジンの効能と似ているようだ。

「動物や人間の細胞には、アレロケミカルを含め、さまざまな物質をキャッチするポケット、いわゆる受容体があります。構造が似ていると、この受容体がキャッチして身体に信号を送り、似たような作用を及ぼすことは十分にあり得ます。あくまでも私の想像で、まだ研究で明らかにはなっていませんが、『プロスタグランジン』と『マタタビラクトン』という物質の構造が似ていることは、マタタビが人間に与える影響を考えるうえで興味があります」

 マタタビラクトンが人間に与える影響は、はっきりとは明らかにはなっていないようだが、血行促進のほかにも鎮痛効果や強精効果、さらに疲労回復にも効果があるとされている。マタタビラクトンは水に溶けにくいため、摂取するにはマタタビに熱水を掛けて成分を抽出し、お茶として飲むといいという。

 なぜマタタビラクトンが猫や人間といった特有の個体にだけ作用するのかなど、まだ良くわからないことの多い模様。いずれにしても、マタタビが生存するうえで獲得したアレロケミカルが、好影響を持っているのは間違いなさそうだ。