昨年6月に“元気な日本復活のシナリオ”として閣議決定された「新成長戦略」。その中で、従来の新築メーンで“壊してはつくる”のフロー重視から、“手を入れて長く使い、住まいの資産価値を高めよう”というストック重視の住宅政策への転換が重点政策として掲げられた。2011年7月末に住宅エコポイント制度が終了したばかりだが、新たなリフォーム促進制度の本格的な検討が始まっている。(ダイヤモンドホームセンター 丸田敬)
ストック重視の住宅政策への転換が狙い
7月末に住宅エコポイント制度が終了したが、国土交通省では現在、リフォームの新ポイント制度について検討している。国土交通省住宅局住宅生産課では「検討中で現段階では何も決まっていない」としているが、今年2月に発足した「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会(座長:弁護士高木佳子氏)」でも検討課題として取り上げられている。
7月に終了した住宅エコポイント制度は、省エネ住宅の普及やリフォームによる住宅の省エネ化を促進することが狙いだったが、リフォーム新ポイント制度は、昨年6月に日本政府が閣議決定した「新成長戦略」の方針に基づき、ストック重視の住宅政策への転換を促進する狙いがある。
「新成長戦略」では、20年までの目標として「中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模倍増」という目標が掲げられており、その中で「数世代にわたり利用できる長期優良住宅の建設、適切な維持管理、流通に至るシステムを構築するとともに、消費者が安心して適切なリフォームを行える市場環境の整備を図る」とある。「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会」の配布資料によれば、09年度における住宅リフォームの市場規模は7兆2200億円とされており、「新成長戦略」の目標どおりに達成できれば、20年に10~15兆円の規模になる。
これを実現するためのひとつの施策として、住宅リフォームの新ポイント制度が検討されているわけだ。
HCにとっても見逃せない
リフォーム新ポイント制度
7月に終了した住宅エコポイント制度には、省エネ住宅の促進ばかりではなく、リフォーム需要を掘り起こす効果もあった。09年12月8日から始まった同制度は、当初は窓や断熱材、バリアフリーを対象製品としていたが、11年1月からはさらに太陽熱利用システム、節水型トイレ、高断熱浴槽が加わった。エコポイントがリフォームの動機付けになったケースも少なくない。
またホームセンター(HC)においても、売上拡大効果が確認されている。目下、リフォームに力を入れているコーナン商事(大阪府/疋田耕造社長)では「二重窓を中心に大きく売上を伸ばすことができた」という。また日本DIY協会(東京都/志村伊知郎会長)は「住宅エコポイントが、DIY素材用品とサービス業務の各分野の売上を押し上げたケースが見られる」としており、HCのリフォーム売上増に貢献した。
この結果から見ても、リフォーム新ポイント制度が今後、HCのリフォーム事業拡大を後押しすることは間違いないだろう。現時点では、同制度の実施開始時期や対象製品、予算規模は未定だが、リフォーム事業に力を入れるHCにとっては、新ポイント制度の動向から目が離せないところだ。
なお前出のコーナン商事は「期待はある」としながらも、「リフォーム事業は物販と工事に対応するために、複数の業者がかかわる。複数の業者とお客さまの日程を合わせてどこまで対応できるか疑問」と、期待と同時に実際の運用上の難しさも指摘する。
近年のHC各社の事業努力により、消費者にとって重要なリフォームチャネルのひとつに成長した。「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会」の配付資料によれば、リフォーム経験者の8%がリフォームについてHCに問い合わせている。
HC各社は、制度開始までの間にリフォーム事業の拡大の準備を整えたい。
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